洋服の機能性加工と有害物質規制
繊維製品には、防しわ、防炎、防かび、防菌、防縮など、様々な機能性加工が施されています。
繊維製品の機能性加工に関する法規制は下図の通りです。
出典:繊維製品(家庭用衣料品)に関連する法規制等 製品評価技術基盤機構
ホルムアルデヒドとは
ホルムアルデヒドには、多種多様な用途があり、繊維の機能性加工にも多用されています。中枢神経障害を起こしやすく、ガンなど重篤な健康被害を起こす可能性のある物質です。
危険有害性情報:
飲み込むと有害(経口)
皮膚に接触すると有毒(経皮)
吸入すると生命に危険(気体)
皮膚刺激
強い眼刺激
吸入するとアレルギー、喘息又は呼吸困難を起こすおそれ
アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ
遺伝性疾患のおそれの疑い
発がんのおそれ
神経系、呼吸器の障害
長期又は反復ばく露による呼吸器、中枢神経系の障害
水生生物に毒性
ホルムアルデヒド規制対象の繊維製品と基準
ホルムアルデヒド規制対象の繊維製品および基準は、下記のとおりです。生後24ヶ月以上の子ども・大人の衣料品のうち、規制対象になっていないもののほうが、ずっと多いことがわかります。
繊維製品の検査
2018年に行われた、規制対象商品7419件の検査では、違反件数は14件でした。違反率は低いものの、実際に購入された商品数に当てはめると、実数はかなりの数になると思われます。
●東京都の調査
東京都が「家庭用品規制法の規制対象外で、子供が使用すると考えられる繊維製品等76商品(衣類、帽子、履物、髪留め等100~3,000円程度の価格の商品で、ホルムアルデヒドが検出される可能性が高いものを選定)」について検査したところ、
・比較的安価な毛皮付き髪留め(1,250ppm及び510ppm)
・トレーナーのフロッキープリント部分(380ppm)
・帽子(250ppm)
から高濃度のホルムアルデヒドが検出されました。
●福岡市の調査
福岡市が同様の検査を行ったところ
・90サイズの子ども用ポロシャツ(130ppm)
・大人用ワイシャツ(82-980ppm, 塩酸抽出法による)
など、高濃度のホルムアルデヒドが検出されました。
どんなに高濃度のホルムアルデヒドが検出されたとしても、ホルムアルデヒド規制対象外の商品であれば、基準違反にはなりません。
ホルムアルデヒド規制対象外の衣類やアクセサリーのほうが多いわけですから、心配は尽きません。
フロッキー加工
フロッキー加工とは、下地の生地に接着剤を塗り、静電気を帯電させて0.5~2mm程度の長さの繊維を吹き付け、ベルベットのような生地にする加工方法です。
ベルベット調のレース、毛皮調の生地、Tシャツのロゴ、アクセサリー、帽子のロゴ、玩具などに使われています。
東京都の調査によって、高濃度のホルムアルデヒドが検出されたのは、Tシャツのフロッキー加工部分や、毛皮調の髪留め(恐らくはフロッキー加工)です。
ホルムアルデヒドは水溶性なので、着用前に水洗いすることが推奨されていますが、3回の洗濯を行った後も、フロッキー加工されたTシャツのホルムアルデヒド除去率は4割にとどまっています。
出典:東京くらしWEB
さらに問題なのは、髪留めは通常、着用前も着用後も洗ったりしないことです。洗濯実験においても、「毛皮調髪留め」の洗濯データはありません。
洗濯してもなお、Tシャツにホルムアルデヒドが残存するのも問題ですが、洗わない商品に、ホルムアルデヒドが多く含有されていることも問題です。
自衛策は下記の通りです。
・機能性加工されていない洋服を選ぶ
・購入した洋服は、着用前に水洗いする
・フロッキー加工されたアクセサリーや玩具は買い控える
【参考資料】
独立行政法人製品評価技術基盤機構 有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律
東京都 身に付けるときには注意して!こんな商品からホルムアルデヒドが