一般社団法人化学物質過敏症・対策情報センター

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2022年 化学物質過敏症研究の最前線④ 翻訳

化学物質過敏症(MCS)の歴史と研究動向をまとめた Multiple Chemical Sensitivity 2022 という総説論文の翻訳です。
2022年 化学物質過敏症研究の最前線③ の続きです。

 

翻訳文責:
一社)化学物質過敏症・対策情報センター
代表理事 上岡みやえ

 

 

目次

 

 

8. 化学物質過敏症の病因:生物学的理論

以下に説明する通り、化学物質過敏症(MCS)の病因については、多くの生物学的理論が提唱されています。

これらの理論は、多くの場合で重複しており、互いに無関係であるとはみなせません。

このことは、特に、多様な発症機序が関与する可能性がある「遺伝的仮説」に当てはまります。

 

 

8.1 神経性炎症仮説

神経性炎症仮説は、臭気のある化学物質が、呼吸粘膜に広く分布している「無髄の c線維ニューロン」の反応を引き起こすことを示唆しています([176,177,178,179]; [180]も参照)。

これにより、多くの炎症過程において、重要なファクターである「サブスタンスP」が放出されます。

その結果として生じる免疫応答が、嘔吐、吐き気、気分障害、ストレスなどの中枢神経系(CNS)を介した症状を引き起こすことが示されています。

この仮説の創始者であるMeggs[178]は、「神経性スイッチング」という用語を導入しました。

これは、ある身体部位(たとえば、鼻の粘膜)で発生した化学的刺激が、中枢神経系(CNS)を介して、他の離れた身体部位で炎症を引き起こし、その結果、頭痛や頻脈などの症状が誘発されるという可能性を示唆しています。

関連する仮説は、Bascom[1]([181]も参照)にも見いだせます。

Bascom は、化学物質過敏症(MCS)は、c-繊維によって引き起こされる、増幅された免疫応答の発現、および/または呼吸上皮の機能の変化によるものであると仮定しました(以下の、免疫システムの調節不全に関するセクションも、参照ください)。

 

8.2 大脳辺縁系の機能障害仮説

大脳辺縁系の機能障害仮説(LSDH)は、キンドリングの研究を土台としています[182,183]。

キンドリングは、最初にラット実験によって、大脳辺縁系に低レベルの電気刺激を繰り返すと、その後、脳の電気的反応が増加することを実証しました。このことは、繰り返された電機刺激によって、発作のしきい値が、永続的に低下する可能性を示すものです。

大脳辺縁系の機能障害仮説(LSDH)は、低レベルの化学物質への反復的あるいは断続的なばく露は、低レベルの電気刺激が繰り返されたときと同じような病理学的反応が起きて、これが持続していくという仮説です。

このプロセスは、Miller の毒性物質による耐性喪失のモデル([4,20,63,184,185])に具体化されています。

Miller は、農薬や溶媒など、様々な炭化水素系毒物は、嗅覚系の末梢受容体を介して脳に到達し、血液脳関門を迂回して、辺縁系に直接アクセスする可能性があるとしています(このレビューについては[186]を参照) 。

これは、知らないうちに、短時間だけばく露した後に発生すると仮定されています。

毒物への継続的ばく露によって、大脳辺縁系はストレス要因に対してより敏感になるという主張です。

Miller [184]によると、TILTには2つの段階があります。

第1段階では、化学物質への急性または慢性的なばく露の後に、それまで有していた耐性を喪失します。

第2段階では、症状が誘発されていきます。以前は無害だった物質が、少量しか存在しない場合にも、症状が出るようになります。

したがって、化学的感受性が発達してしまった人は、以前は大丈夫だった物質やばく露レベルでも、症状が出てしまう可能性があります。

TILTによって、シックビルディング症候群(SBS)や 湾岸戦争症候群(GWS)など、化学物質過敏症(MCS)に並置されることが多い症候群に共通してみられる症状を説明できるようになります。

最初の症状は、屋内の揮発性化合物(カビ、ホルムアルデヒド、可塑剤、カーペット、塗装)によって引き起こされ、次の症状は、石油火災、ディーゼル燃料、農薬などの煙や刺激物への継続的なばく露によって引き起こされます。

大脳辺縁系の機能障害仮説(LSDH)を踏まえた上で、Heuser と Wu [187] は、ポジトロン・エミッション・トモグラフィー(PET)を使用して、化学物質過敏症(MCS)患者の脳を撮影し、皮質深部と大脳辺縁系の代謝亢進を発見しました。

同様に、Orriols ら [181] は、単一光子放出コンピューター断層撮影法(SPECT)を使用して、偏桃体、海馬、右側頭皮質などの嗅覚領域からの抑制性シグナル伝達の低下を発見しました。これは、化学物質過敏症(MCS)患者の感受性が高まったことを示唆するものです。

同様に、Andersson ら[188]は、低レベルの嗅覚および三叉神経刺激にばく露した特発性環境障害(IEI)患者の fMRI研究で、大脳辺縁系の活動亢進を観察しました。

しかし、これらの発見とは対照的に、12人のMCS患者を対象とした2つのPET研究では、化学物質過敏症(MCS)に特有とされる、安静時機能イメージング脳パターンは見つかりませんでした[189,190,191]。

 

 

8.3 神経感作と過剰反応性(仮説)

神経感作と過剰反応性は、Bell ら[ 192 ]によって提唱されている、大脳辺縁系の機能障害仮説(LSDH)に平行する仮説です。

健康な対照群との比較において、EEGアルファ周波数振幅の増加によって明らかにされた神経感作の症例は、化学物質に敏感な女性が、化学物質に断続的にばく露した後に、観察されています[ 76 ]。

皮膚伝導性の変化は、化学物質過敏症(MCS)患者では見られましたが、比較対照群では見られませんでした[ 193 ]。

ベルら[ 194 ]は、継続的試験を通して、臭気に耐性のない高齢者は、臭気に耐性のある高齢者よりも、心拍数と拡張期血圧が高いことを発見しました。

このことは、化学物質過敏症(MCS)の大脳辺縁系の機能障害仮説(LSDH)からの予測とも一致しています。

 

 

8.4 免疫系の調節不全(仮説)

アレルギー反応と免疫系の変化も、考えられうる化学物質過敏症(MCS)の発症機序として提唱されています。

しかし、化学物質に対する感受性は、循環する免疫グロブリンとリンパ球のレベルの変化が、日常レベルでは観察されていないため、古典的手法によっては、汚染物質や他の環境因子に対するアレルギー反応と見なすことはできません[ 16 ]。

それにもかかわらず、カビへばく露したことがはっきりしている患者は、免疫グロブリンA/M/Gなどの神経特異的抗原に対する抗体力価が異常上昇したため、様々な程度の末梢神経障害を証明するために、感覚神経と運動神経の両方の神経伝導時間が測定されました[ 195]。

湿気で傷んだ建物にい続けることは、気道感染症、粘膜の炎症、喘息のような症状「湿気・カビ過敏症候群(DMHS)」の原因となる可能性があります。

一部の研究者は、湿気・カビ過敏症候群(DMHS)は、免疫系の調節不全によってもたらされる、過敏症と感染症に対する感受性の増強を引き起こす、と主張しています[ 196 ]。

湿気・カビ過敏症候群(DMHS)の病理学的な症状の最有力候補は、化学物質過敏症(MCS)です。両者の症状には、多くの共通性がみられます(包括的なレビューについては[ 65 ]を参照)。

Hirvonen ら [197]は、カビがたくさん生えている学校で働く人たちの鼻を洗浄した液中に含まれる炎症性サイトカインの濃度が、対照群よりも多く、それがカタル、咳、鼻炎、疲労などの症状を引き起こしていることを発見しました。

免疫原性調節不全は、生体異物へのばく露によるサイトカイン放出後にも、観察されています[ 198、199 ]。

Jalava ら[ 200 ]は、都市の空気中の微粒子状物質が、炎症および細胞毒性効果の引き金になることを発見しました。

さらに、Belpomme、Campagnac、Irigaray [ 201 ]は、化学物質過敏症(MCS)と電磁波過敏症(EHS)患者が、対照群と比較して、より高いレベルのヒスタミン、視床と大脳辺縁系に影響を与える炎症プロセス、そして酸化ストレスを示すことを観察しています(電磁波過敏症[ 202])。

研究者らは、これらを、2つの疾病の診断基準として採用できる、信頼のおける客観的なバイオマーカーとみなすとともに、両疾病に共通する、病理学的メカニズムであることを示唆しています。

[ 化学物質過敏症(MCS)に関する、信頼できる生物学的バイオマーカーに関するレビューとしては De Luca ら [34]を、化学物質過敏症(MCS)と免疫学的検査の信頼性との関係についてはフーバーら [203]を参照ください。]


ただし、上記とは結果が異なる研究もいくつか存在します。

例えばグラマーら [204] は、ホルムアルデヒド吸入後の労働者が示す症状は、免疫学的に媒介された喘息によって引き起こされたものではないことを観察しています([205]も参照)。

同様に、Fiedler ら[ 2 ]は、化学物質過敏症(MCS)患者には、免疫系反応の異常を見つけることができませんでした。

ミッチェルら[ 206 ]は、化学物質過敏症(MCS)集団に見られる免疫学的変化は、それほど重要ではなく、すべての患者に影響を与えるわけではないと述べています。

化学物質過敏症(MCS)への、免疫学的な発症機序についての批判的視点は、多くの研究者が提唱しているところです[ 12、16、33、207、208]。

 

 

8.5 酸化ストレス仮説

化学物質過敏症(MCS)の原因として酸化ストレス仮説をたてている研究者は多いです。

酸化ストレスの指標の2つ、「一酸化窒素(NO)」と「ペルオキシ亜硝酸(PN)」のレベルが上昇している状態が、化学物質過敏症(MCS)のバイオマーカーであると主張されています。

Belpomme ら[ 201、202 ]は、化学物質過敏症(MCS)および電磁波過敏症(EHS)の患者では、ペルオキシ亜硝酸(PN)のマーカーである血清ニトロチロシンが増加していることを示し、酸化ストレス仮説を支持しています。

同様に、Hirvonenら[ 198 ]は、カビ関連の微生物にばく露した人の鼻を洗った洗浄液は、一酸化窒素(NO)濃度が増加していること発見しました。

化学物質過敏症(MCS)の生化学的メカニズムに「一酸化窒素(NO)」と「ペルオキシ亜硝酸(PN)」が関与しているという主張の最良の証拠は、 Pall の一連の研究成果の中に見られます。

Pall [ 209、210、211、212、213 ]によると、化学物質過敏症(MCS)として報告される過敏性は、生化学的なカスケード反応(次々に起きる化学反応)が原因である可能性があります。

カスケード反応とは、例えば、有機溶媒によるN-メチル-d-アスパラギン酸(NMDA)受容体が活性化すると、一酸化窒素(NO)とペルオキシ亜硝酸(PN)の酸化生成物(ONOO)が増加するといった、化学的連鎖反応です。

特に、N-メチル-d-アスパラギン酸(NMDA)受容体を刺激する環境ストレッサーは、辺縁系の燃え上がり現象、神経感作、神経性炎症プロセスにも作用します。

その最終段階では、体に備わっている無毒化機能を損なう「血液関門透過性」が増加し、中枢神経系(CNS)への化学物質流入量が増えていきます。こうして、有機溶媒に対する過敏性が、少しずつ発現していくのです。

疎水性有機溶媒や、生化学的な一酸化窒素(NO)~ 酸化生成物(ONOO)サイクルを引き起こす農薬などの生体異物が、化学物質過敏症(MCS)の発症原因になっているようです。

さらに、Pall [ 210、212 ] は、 化学物質過敏症(MCS)の症状についての生化学的解釈を、慢性疲労症候群(CFS)、線維筋痛症(FM)、心的外傷後ストレス障害(PTSD)など、他の疾患にも拡張できることを示唆しています。

これらの疾病には、化学物質過敏症(MCS)との類似がみられます。共通のメカニズム,、すなわち、一酸化窒素(NO)と ペルオキシ亜硝酸(PN)のレベルの上昇によって発症している可能性があります。

Pall の仮説を直接的・間接的に支持する関連研究は、[ 34、199、214、215、216、217、218 ]などです。

Pall の仮説は、辺縁系の燃え上がり現象、神経感作、神経性炎症の仮説に関連しているようにも見えるため、化学物質過敏症(MCS)の発症機序の根本となりうる理論を、単一の解釈で統合できる可能性があります[ 217 ]。

しかしながら、Pall の仮説モデルでは、化学物質過敏症(MCS)患者が示す多臓器病変や、生体異物を誘発するものの多さについては、説明しきれないところがあります。

 

8.6 遺伝子理論(仮説)

化学物質過敏症(MCS)の発症機序について、遺伝的に過敏症になりやすい人がいるという理論は広く支持されています。

提唱されている理論の1つは、化学物質過敏症(MCS)は、化学物質の解毒および薬物の代謝に有効な酵素が少ない、あるいは弱いため、化学物質過敏症(MCS)の症状を呈しやすくなるというものです。

この仮説に従って、McKeown-Eyssen ら [219] は、化学物質過敏症(MCS)の女性患者の203名と、対照群の女性162名の比較調査を行いました。

化学物質過敏症(MCS)の方が、より高いレベルのチトクロムP450 CYP2D6(=体内の生体異物の代謝に関与している最も重要な酵素の1つ)と、n-アセチルトランスフェラーゼ2(NAT2)を有していることが観察されました。

CYP2Dアイソフォームは、毒素を活性化あるいは不活性化しますが、NAT2は、アクリルアミンをタンパク質結合代謝物へと活性化します。

同様に、Schnakenberg ら [220] は、多種多様な化学物質の代謝に関与する遺伝子変異を調べるために、化学的感受性がとても高いと自己申告した248名と、化学的感受性はとても低いと自己申告した273名とを比較調査しました。

化学的感受性が高いと申告した人の方が、グルタチオンS-トランスフェラーゼ遺伝子のGSTM1、GSTT1、GSTP1、そしてNAT2遺伝子に変異が多いことがわかりました。

グルタチオンS-トランスフェラーゼは、生体異物の無毒化プロセスと、酸化ストレスからの細胞保護に関与している遺伝子です。

前述の通り、化学物質過敏症(MCS)には、コレシストキニンB受容体(CCK-B)が関係する「パニック障害」に共通する症状がみられます[142]。

Binkleyらの、コレシストキニン(CCK)受容体の対立遺伝子の分類研究において [143]、化学物質過敏症(MCS)患者の22の対立遺伝子の 40.9% は、コレシストキニンB受容体(CCK-B)の対立遺伝子「7」でした。同じ対立遺伝子がパニック障害に関連していることも示されています[221]。

 

対立遺伝子
相互に区別できる遺伝子の変異体で同一の遺伝子座にあるものをいう。突然変異などが原因となってできる。発現の強/弱を優性/劣性といって区別する。
(栄養・生化学辞典)

 

健康な対照群では、22の対立遺伝子の 9.2% のみが、コレシストキニンB受容体(CCK-B)の対立遺伝子でした。

湾岸戦争で、有機リン系農薬、神経剤、高濃度の n、n-ジエチル-m-トルアミド(DEET)昆虫忌避剤、および毒性レベルのピリドスティグミン(神経ガスに対抗するためのコリン作動薬)へばく露した退役軍人は、パニック障害を発症しやすいことが知られています。

Haley、Billecke、La Du [222]は、複数の症状を呈する退役軍人は、パラオキソナーゼ-1(PON1)の遺伝子型が、ホモ接合Qよりも、R対立遺伝子(ホモ接合Rまたはヘテロ接合QR)である可能性が高いことを発見しました。

R対立遺伝子は、酸化からのリポタンパク質の保護に関連しており、心血管疾患など多くの疾患にかかりにくくする遺伝子です。

体調不良の退役軍人は、パラオキソナーゼ-1(PON1)型のQアリールエステラーゼ・アロザイムが低活性化している点が、

・PON1型遺伝子
・Rアリールエステラーゼ・アロザイム
・すべてのアリールエステラーゼ
・すべてのパラオキソナーゼ
・ブチリルコリン・エステラーゼ

の活性レベルが優良な比較対照群とは異なっています。

急性ピリドスチグミン中毒が悪化した患者にも、パラオキソナーゼ-1(PON1)型のQアリールエステラーゼの低活性化がみられます。

これらの調査結果は、環境化学物質へのばく露が、一部の湾岸戦争の退役軍人に、化学物質過敏症(MCS)にみられる神経症状を引き起こす可能性があるという仮説と一致します。上述の遺伝子型の人は、環境化学物質へばく露したときに、大きな影響を受ける可能性があります。

しかし、多くの研究が、化学物質過敏症(MCS)患者と対照群の間に、明確な遺伝的差異がないことを示しています。

たとえば、Wiesmüller ら [223]は、59名の化学物質過敏症(MCS)患者と、40名の対照群との比較研究において、セロトニントランスポーター(5HTT)、スーパーオキシドジスムターゼ2(SOD2)、NAT1、NAT2、PON、およびPONの遺伝子における遺伝子多型の対立遺伝子分布には、有意な違いはないと報告しています。

Dantoft ら [224]は、化学物質過敏症(MCS)患者18名と、対照群18名との間で、化学物質過敏症(MCS)に関与している可能性が高いとされる、生化学的プロセスに関与する26の遺伝子(免疫調節、感覚検出、生理学的ストレス応答、スフィンゴシン-1-リン酸経路内の酵素に関与する遺伝子など)の発現レベルを比較しました。

被験者は、実験室内で1時間、n-ブタノール へばく露しました。ばく露する前と、ばく露した後の両方で、遺伝子発現レベルが調査されました。

両群とも、ばく露前後の遺伝子発現レベルは、非常に似通っていました。

調査された遺伝子においては、化学物質過敏症(MCS)患者と健康な対照群との間に、発現レベルの違いは見られませんでした。

最近では、Berg ら [225]が、 化学物質過敏症(MCS)患者96名と、化学物質過敏症(MCS)重症度別に4グループに分けた対照群1207名について、チトクロムP450 2D6、NAT-2、PON1、メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ、およびCCK2受容体をコード化する遺伝子変異体の遺伝子型を決定しました。

化学物質過敏症(MCS)患者と対照群の間においても、対照群のなかに設けられた4つの重症度別グループの間においても、遺伝子変異体の頻度に、統計的に有意な差は見つかりませんでした。

化学物質過敏症(MCS)の遺伝性を証明する動物モデルはありません。ただし、遺伝子操作によって嗅覚を鋭くできるという考え方においては、カリウムKv 1.3チャネルの遺伝子標的欠失を有するマウスは、臭気の検出しきい値が1000〜10,000倍低く、同腹仔との比較においては、匂い物質を区別する能力が高いこと[226]が知られています。

私たちが知る限り、げっ歯類の嗅覚過敏に関連する遺伝子は、化学物質過敏症(MCS)の症例では調査されていません。化学物質過敏症(MCS)研究では、測定可能な嗅覚機能障害が少ないことを踏まえると、この方面からの研究は徒労に終わりそうです。

 

 

2022年 化学物質過敏症研究の最前線⑤ に続く