世界五大医学雑誌ともいわれ、世界的権威のある医学ジャーナル「BMJ」に、アメリカ食品医薬品局(FDA) の、新薬承認の恐るべき実態が紹介されていたので翻訳しました。
翻訳文責:
一社)化学物質過敏症・対策情報センター
代表理事 上岡みやえ
記事を理解するための基礎知識を読んだ上で、アメリカ食品医薬品局(FDA) 新薬承認の恐るべき実態~BMJの記事の抜粋をご覧いただけると幸いです。
記事を理解するための基礎知識
BMJ
BMJは、世界で最も古い一般医学雑誌の1つです。1840年10月3日に最初の週刊版が発行され、4年後の1857年1月に「ブリティッシュメディカルジャーナル」という雑誌名になりました。雑誌名は、1988年にBMJに変更されました。
BMJは、世界五大医学雑誌の一角をなす、世界的権威のある医学雑誌です。
※医学雑誌の権威・信頼性は、インパクトファクター(IF)という指標によってランク付けされています。
画像引用:論コレ
アメリカ食品医薬品局(FDA)とは
アメリカ食品医薬品局(FDA)は、食品や医薬品などについて、審査・許可・取り締まりを行っている行政機関です。アメリカ合衆国保健福祉省(Department of Health and Human Services, HHS)の配下にあります。
食品
薬品
医療機器
放射線を放出する製品
ワクチン、血液製剤、生物学的製剤(バイオテクノロジー技術によって生み出された医薬品)
動物および獣医
化粧品
たばこ製品
アメリカ食品医薬品局(FDA)迅速承認プログラム
FDAの迅速承認プログラムとは、医療ニーズを満たす薬剤の早期承認を可能にするために「代用エンドポイント」を利用する方法です。「代用エンドポイント」を使用すると、FDAの承認を受けるまでに必要な時間を大幅に短縮できます。
ただし、製薬会社は、予想される臨床的利益を確認するための研究(第4相確認試験)を実施しなければなりません。
第4相確認試験によって、その薬が実際に臨床的利益をもたらすことが示された場合は、FDAは、その薬を正式承認します。
第4相確認試験によって、薬が臨床的利益をもたらすことが示されなかった場合、FDAは、薬の販売を停止させることができます。
エンドポイントとは
【真のエンドポイント】
例えば死亡率、疾患の発症率、QOLが向上しているかどうか、副作用の低減率など、客観性・普遍性が認められる項目の最たるもの。
ただし、これらの項目は、治験中の短期間で計測することが難しいため、実際のエンドポイントとなることはほぼ無い。
【代用エンドポイント(サロゲートエンドポイント)】
例えば血糖値、血圧、コレステロール、腫瘍の大きさ、血清脂質値など、治験期間でも計測できる項目。
参考資料:エンドポイントとは | 製薬業界 用語辞典 | Answers(アンサーズ)
アメリカ食品医薬品局(FDA)
新薬承認の恐るべき実態
以下、「有効性データの欠落と明らかな悪行に悩まされているアメリカ食品医薬品局(FDA)の<迅速承認プログラム>」(2021年7月31日 理学士 エミリー・ヘンダーソン 査読済み」”FDA's accelerated drug approval process plagued by missing efficacy data and questionable evidence”(Jul 31 2021 Reviewed by Emily Henderson, B.Sc)という記事からの抜粋です。
・TheBMJの臨床記者 Elisabeth Mahaseが、2020年12月31日までのFDAデータを分析した。
・アメリカ食品医薬品局(FDA)は、1992年以来、医療ニーズを満たす薬剤の早期承認を可能にするために「代用エンドポイント」を利用して薬の承認期間を短縮できるようにしている。
・ただし、製薬会社は、「予想される臨床的利益を検証する」ために、承認後の研究(第4相確認試験として知られる)を実施しなければならない。
・承認された253の医薬品のうち、承認取り消しとなった薬は16種類。承認取り消し理由の大半は「臨床的に有効であると確認できなかったから」である。
・しかし、承認取り消しとなった薬の中には、なんと「確認試験が行われなかった」から販売中止となったものが存在する。
・セレコキシブは、遺伝性疾患の家族性大腸腺腫症の治療薬として1999年に「迅速承認」された薬だが、ファイザー社は有効性試験を行わなかった。セレコキシブは、FDAがファイザー社に「自主的販売中止」するよう指導するまで12年間販売され続けた。
・BMJによる調査によって、承認された253の医薬品のほぼ半分(112)が、臨床的に有効であると確認されていないことが判明した。
・臨床的に有効であると確認されていない112の薬のなかには、5年以上にわたって販売されていた薬が24種類あった。その中には20年以上販売され続けている薬もあった。しかも高値で。
・BMJは、製薬会社に、これら24の薬の第4相試験を実施したか質問した。
➢ 6つの薬が承認取り消し/正式承認/延期 となった。
➢ 残る18の薬のうち、6つの薬については回答があった。
うち4つの薬については患者募集が開始された。
残る2つの薬は、最終的な研究デザインについて、FDAと協議中だと説明された。
画像引用:BMJ
考察
衝撃ポイントを4つ抜き出しました。
衝撃ポイント①
承認取り消しとなった薬の中には、なんと「確認試験が行われなかった」から販売中止となったものが存在する。
➢アメリカ食品医薬品局(FDA)は、「医療ニーズを満たす薬剤の早期承認を可能にする」ために「代用エンドポイント」を利用して薬の承認期間を短縮してきました。製薬会社に、「予想される臨床的利益を検証する」義務が発生するのは当然です。承認後の研究(第IV相確認試験として知られる)を実施しないケースがあるとは言語道断です。
➢セレコキシブは、遺伝性疾患の家族性大腸腺腫症の治療薬として1999年に「迅速承認」された薬ですが、ファイザー社は、なんと、有効性試験を行わなかったというのです。セレコキシブは、FDAがファイザー社に「自主的販売中止」するよう指導するまで12年間販売され続けたそうですが、これは「自主的販売中止」事案ではなく、製薬会社としての免許を取り消すべき事案なのではないでしょうか。
衝撃ポイント②
BMJによる調査によって、承認された253の医薬品のほぼ半分(112)が、臨床的に有効であると確認されていないことが判明した。
臨床的に有効であると確認されていない112の薬のなかには、5年以上にわたって販売されていた薬が24種類あった。その中には20年以上販売され続けている薬もあった。しかも高値で。
➢医師処方の薬のなかに、臨床的に有効であると確認されていないものが112薬もあるとは。患者は、そのことを知っているのでしょうか。もし、徹底した情報開示・情報提供・説明責任が果たされていないのならば、大問題です。
➢患者に薬を処方する医師が、アメリカ食品医薬品局(FDA)の「迅速承認プログラム」の意味を理解していないとすれば、大問題です。医師免許を取り消してほしいレベルの話です。
➢医師がアメリカ食品医薬品局(FDA)の「迅速承認プログラム」の意味を理解している場合には、逆に、医師と製薬会社がグルになってアメリカ食品医薬品局(FDA)の「迅速承認プログラム」を悪用し、患者の命を危険にさらしながら大儲けしているといるという疑惑が持ち上がります。
➢このような状態を許しているアメリカ食品医薬品局(FDA)。無責任にも程があります。
衝撃ポイント③
BMJは、製薬会社に、これら24の薬の第4相試験を実施したか質問した。
⇒ 6つの薬が承認取り消し/正式承認/延期 となった。
⇒ 残る18の薬のうち、6つの薬については回答があった。
うち4つの薬については患者募集が開始された。
残る2つの薬は、最終的な研究デザインについて、FDAと協議中だと説明された。
➢「5年以上にわたって販売されてきている薬」なのに「患者募集」さえなされていない薬が4つもあったとは。第三者であるはずの医学雑誌「BMJ」が問い合わせるまで、そんな恐ろしい事態が放置されていたとは。アメリカ食品医薬品局(FDA)は、いったい何を監督しているのでしょうか。
➢「5年以上にわたって販売されてきている薬」なのに、最終的な研究デザインについて、い ま だ アメリカ食品医薬品局(FDA)と協議中だとは、ふざけるにも程があります。第三者機関であるBMJが問い合わせるまで、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、こんな状態を放置していたわけです。呆れ果てるばかりです。
衝撃ポイント④
BMJは、製薬会社に、これら24の薬の第IV相試験を実施したか質問した。
12の薬について回答がなかった。
➢ 患者に販売されている薬のうち、12の薬については、第4相試験が実施されているのかさえも不明なまま放置されているのです。
➢患者に薬を処方する医師が、アメリカ食品医薬品局(FDA)の「迅速承認プログラム」の意味を理解していないとすれば、大問題です。医師免許を取り消してほしいレベルの話です。
➢医師がアメリカ食品医薬品局(FDA)の「迅速承認プログラム」の意味を理解している場合には、逆に、医師と製薬会社がグルになってアメリカ食品医薬品局(FDA)の「迅速承認プログラム」を悪用し、患者の命を危険にさらしながら大儲けしているといるという疑惑が持ち上がります。
➢このような状態を許しているアメリカ食品医薬品局(FDA)。無責任にも程があります。
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薬の良し悪しの判断基準は「真のエンドポイント」であるべきではないでしょうか。
真のエンドポイント
・死亡率
・疾患の発症率
・生活の質(QOL)が向上しているかどうか
・副作用の低減率
「真のエンドポイント」は、治験中の短期間で計測することが難しいため、新薬承認に際して採用されることはないそうです。ならば尚更、薬が「正式承認」された後に、薬を処方された患者一人ひとりを追跡調査し、「真のエンドポイント」を検証する作業が必要なのではないでしょうか。