日本の学校給食と食育
学校給食の目的や目標は「学校給食法」に定められています。第二条には、素晴らしい目標が定められています。
(学校給食の目標)
第二条 学校給食を実施するに当たつては、義務教育諸学校における教育の目的を実現するために、次に掲げる目標が達成されるよう努めなければならない。
一 適切な栄養の摂取による健康の保持増進を図ること。
二 日常生活における食事について正しい理解を深め、健全な食生活を営むことができる判断力を培い、及び望ましい食習慣を養うこと。
三 学校生活を豊かにし、明るい社交性及び協同の精神を養うこと。
四 食生活が自然の恩恵の上に成り立つものであることについての理解を深め、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと。
五 食生活が食にかかわる人々の様々な活動に支えられていることについての理解を深め、勤労を重んずる態度を養うこと。
六 我が国や各地域の優れた伝統的な食文化についての理解を深めること。
七 食料の生産、流通及び消費について、正しい理解に導くこと。
2005年に制定された「食育基本法」の前文には、食育基本法が求められる意義が、以下のように述べられています。
食育基本法 前文
国民一人一人が「食」について改めて意識を高め、自然の恩恵や「食」に関わる人々の様々な活動への感謝の念や理解を深めつつ、「食」に関して信頼できる情報に基づく適切な判断を行う能力を身に付けることによって、心身の健康を増進する健全な食生活を実践するために、今こそ、家庭、学校、保育所、地域等を中心に、国民運動として、食育の推進に取り組んでいくことが、我々に課せられている課題である。さらに、食育の推進に関する我が国の取組が、海外との交流等を通じて食育に関して国際的に貢献することにつながることも期待される。
学校給食の現実
文部科学省によると、2018年の学校給食費の平均月額は、小学校で4,343円、中学校で4,941円だったそうです。
小中学校の給食を管轄しているのは市町村です。学校給食の調理・調達には、下記の4方式が採用されています。
自校調理
学校内の敷地に調理場があり、その学校分のみを調理する
親子方式
調理場をもつ自校方式の学校(親)が、調理場をもたない学校(子)の給食調理も行い、給食時間までに配送する
給食センター
複数の学校の給食を一括して調理し、給食時間までに配送する
デリバリー
お弁当配達
有機農産物・有機野菜とは
日本では、以下を含む「有機農産物の日本農林規格」の基準に従って生産された農産物を、有機農産物と呼んでいます。
・周辺から使用禁止資材が飛来し又は流入しないように必要な措置を講じている
・は種又は植付け前2年以上化学肥料や化学合成農薬を使用しない
・組換えDNA技術の利用や放射線照射を行わない
「有機農産物」や「有機野菜」などと表示するには、有機JAS規格という法律に則って登録認定機関の審査を受け、「有機JAS認証」を取得しなければなりません。
「有機JASマーク」がない農産物、畜産物及び加工食品に、「有機」、「オーガニック」などの名称を表示すること、これと紛らわしい表示を付すことは、法律で禁止されています。
学校給食に有機農産物が提供されている国や地域
まだまだ少数派ですが、学校給食に有機農産物が提供されている国や地域があります。
◆愛媛県今治市鳥生(とりう)小学校
1981年、愛媛県今治市とりう小学校の学校給食で、その校区で生産された有機農産物の使用が始まりました。
2001年に改正JAS法が施行され、有機食品等の認証制度がスタートした時には、生産者達はすぐにこの「有機JAS認証」を取得しました。
現在、今治市全体では、約1割の学校給食に、市内で生産された有機農産物が使われています。今治市産有機野菜の使用割合は、年平均で、40%前後です。
有機の割合が100%に満たないのは、
・この地方で栽培できない野菜などを他から購入している
・旬の時期以外に恒常的に供給することが困難な野菜がある
などが理由です。
現在は、有機野菜の導入をさらに進めるために、調理場単位での、有機野菜の生産グループの結成を、農家やPTAへ働きかけているそうです。
◆千葉県いすみ市
千葉県いすみ市は、2015年度から、学校給食に地元産の有機米を採用しています。
米農家の協力を得て有機米の生産量を徐々に増やし、2018年度には全量が有機米に切り替わったそうです。
2018年度からは、給食用の野菜の有機化にも着手し、現在までに7品目の有機化に成功しています。
いすみ市農林課は、「今取り組んでいるキャベツで8品目め。すべての野菜を有機化するのが目標だ」と話しています。
◆リンデンホールスクール小学部
福岡県太宰府市 リンデンホールスクール小学部では、お米や野菜のほぼ100%を、有機又は無農薬にすることに成功したそうです。
リンデンホールスクール小学部の担当者は、インタビューに、
「最近になり、地域に有機農家が増えていることがわかったので、やれることからやってみようということになった」
「1か月先にどんな野菜が採れるか農家に聞いて、それに合わせて献立を作るようになった」
と答えています。
◆イタリア
Organic school meal systems – towards a more sustainable nutrition, 2009
北部ピアチェンツァでは、地元の持続可能な食料生産を支援し、環境を保護するという政治的決定によって、有機農産物が学校給食に使われ始めました。
イタリアでは、以前から、地元の有機生産者の間で「協力ネットワーク」が確立されていました。そのことが、学校給食に有機農産物を導入するときの、大きな助けになったそうです。
子どもの貧困 食の貧困
2018年度、日本の小中学生の約15%、137.5万人の子どもが、就学援助を受けています。就学援助には補助対象費目があります。
学用品費/学校給食費/体育実技用具費/新入学児童生徒学用品費等/通学用品費/通学費/修学旅行費/校外活動費/医療費/クラブ活動費/生徒会費/PTA会費
などの費目について減免されるようになっています。
給食費に対する支援については、小中学校で給食が提供されなければ、支援を受けることができません。
要保護家庭の子どもは、学校給食があれば食べることができるけれども、学校給食がないと、食べることさえかなわない可能性があるのです。
学校給食の無償化
学校給食が無償の国や地域
フィンランド、スウェーデンは、子どもの学校給食は無償です。
フィンランドは1948年、世界で初めて、学校給食を無償化する学校給食法を定めた国です。
韓国は、自治体の7割で小中学校の給食が無償化されています。小学校に限ると9割の自治体で、給食が無償化されています。
日本では
平成29年度の「学校給食費の無償化等の実施状況」及び「完全給食の実施状況」の調査結果について
全国1,740 自治体のうち、学校給食費の無償化を実施する自治体は 76 自治体(4.4%)です。学校給食が無償化された自治体の9割以上が、町村です。
人口1万人未満の自治体7割を占めています。
① 小学校・中学校とも無償化を実施…76 自治体(4.4%)
② 小学校のみ無償化を実施…4 自治体(0.2%)
③ 中学校のみ無償化を実施…2 自治体(0.1%)
沖縄県では、宮古島市が、小中学校の給食を無償化しています。
食育・味覚の形成・学校農園
◆京都 立命館小学校
給食作りは、びわ湖大津プリンスホテルに委託しているそうです。子どもたちは、毎日学内の調理室でプロが作る料理を、出来立ての状態で食べているそうです。
食育やマナー教育もおこなわれています。
◆うすい味を「まずい」と感じる理由
2017年 読売新聞オンライン
・朝は簡単なパン食で済ます、または食べない
・夜はスーパーの総菜やコンビニ弁当
・休日は外食
濃い味に慣れてしまい、味覚形成の大事な時期なのに食材そのものの味がわからないまま育ってしまう可能性がある
◆愛媛県今治市 学校農園での有機JASの取得
今治市では、市内の小中学校に学校農園での有機JAS取得を呼びかけたところ、2002年度から4つの小学校で取得にチャレンジし、見事4校とも有機JASの取得に成功しました。
この取り組みは、現在でも、立花小学校で続けて実施しています。
有機農業 ~ 提携
有機農業の取り組みが、単なる商品の売り買いではなく、生産者と消費者が対等の立場で、お互いが相助け合い、支え合う「提携」という形で行われてきたからだといえます。
※世界でも日本でも、学校給食の無償化や、有機農産物の使用を進めている国や地域はここでご紹介した以外にも、様々な事例ああります。