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ビタミン剤や医薬品の知られざる恐怖「残留溶剤」

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タミン剤や医薬品の知られざる恐怖

医薬品製造には「溶媒」が使用されます。有害性の高い化学物質も「溶媒」として使用されています。


例えば、アセトニトリルは、中枢神経毒性が高いことがわかっている物質ですが、サルファ剤(抗菌薬)やビタミン剤B1の製造に使用されています。

「溶媒」の一部は医薬品に残留します。

 

PDE/Permitted daily exposure とは、医薬品中に残留する溶媒の1日当たりに摂取が許容される最大量を意味する言葉です。医薬品には溶媒が残留することがわかっているからこそ、このような言葉と基準があるわけです。

 

以下、医薬品の残留溶媒ガイドライン(厚生労働省)を転載しています。

 

 

一般原則

(1)リスクアセスメントによる残留溶媒の分類

 

国際化学物質安全性計画(IPCS)では、「Tolerable Daily Intake(TDI)」という用語が用いられており、一方、 世界保健機構(WHO)、その他各国及び国際的な保健担当部局並びに関連団体などは、「Acceptable Daily  Intake (ADI)」という用語を用いている。

 

本ガイドラインにおいては、同じ物質の ADI 値として、WHO などの定めたものと異なった値を与えることによる混乱を避けるために、「Permitted Daily Exposure (PDE)」という新しい用語を、医薬品由来の残留溶媒の許容摂取量と定義して用いることとした。

 

PDE/Permitted daily exposure

医薬品中に残留する溶媒の1日当たりに摂取が許容される最大量。

 

本ガイドラインにおいて評価された残留溶媒の一般名と化学構造を別添1(本ガイドラインに含まれる溶媒の一覧表)に示す。

 

これらの溶媒がヒトの健康に及ぼし得るリスクについて評価を行い、下記の3つのクラスのいずれかに分類した。

 

ア クラス1の溶媒(医薬品の製造において使用を避けるべき溶媒)

ヒトにおける発がん性が知られている溶媒、ヒトにおける発がん性が強く疑われる溶媒及び環境に有害な影響を及ぼす溶媒

 

イ クラス2の溶媒(医薬品中の残留量を規制すべき溶媒)

遺伝毒性は示さないが動物実験で発がん性を示した溶媒、神経毒性や催奇形性等発がん性以外の不可逆的な毒性を示した溶媒及びその他の重大ではあるが可逆的な毒性が疑われる溶媒

 

ウ クラス3の溶媒(低毒性の溶媒)

ヒトに対して低毒性と考えられる溶媒。健康上の理由からは曝露限度値の設定は必要ない。クラス3の溶媒は、50mg/day 以上の PDE 値を持つものである。   

 

(2)曝露限度値の設定法

残留溶媒の PDE 値を設定するのに用いられた方法を別添3(曝露限度値の設定法)に示した。

残留溶媒の限度値を設定するのに用いられた毒性データの概要は、「pharmeurope、 Vol.9,  No.1‐Supplement. April 197」に公表されている。   

 

(3)クラス2の溶媒の限度値設定のためのオプション

クラス2の溶媒について限度値を設定する場合には、次の2つのオプションのいずれを利用してもよい。

 

ア  オブション1

表2の ppm で表された濃度限度値を用いてもよい。これらの値は、1日に服用される製剤の量を10g と仮定し、式 を用いて計算されたものである。

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式中、PDE は mg/day で、また、服用量は g/day で表される。

これらの限度値は、すべての原薬、医薬品添加物又は製剤において許容されるものとする。したがって、 1日服用量が不明であるか一定しないような場合には、このオプションが適用し得る。

処方中のすべての原薬及び医薬品添加物がオプション1に示された限度値に適合する場合には、これらの成分はどのような比率ででも使用できる。この場合、1日服用量が10g を超えなければ、計算を行う必要はない。一日服用量が10 g を超える製剤には、オプション2を適用すべきである。

 

イ オプション2

製剤中の各成分がすべてオプション1に示された限度値に適合する必要はないと考えられる。表2の   mg/ day で表された PDE 値と実際の1日最大服用量から、上記の式 を用いて、製剤中に残留が許容される溶媒の濃度を算出してもよい。

残留量を実際に可能な最小限まで減らしたことが示された場合には、そうした限度値が許容される。

その限度値は、分析の精度、製造上の能力、製造工程において起こり得るばらつきの大きさからみて現実的なものでなければならず、かつ現在の医薬品の製造の標準的なレベルを反映したもの でなければならない。

オプション2を適用するには、製剤の各成分中に存在する残留溶媒の量を加算すればよい。1日当たりに摂取する溶媒の量の合計は、PDE 値以下でなければならない。

 

使用例
オプション1とオプション2の使用例として、まず、下記の製剤中のアセトニトリル残留量への適用を考えてみる。

アセトニトリルの PDE 値は4.1m/day、すなわち、オプション1での限度値は410ppm である。

この製剤の1日最大服用量は5.0g であり、2種類の医薬品添加物を含んでいる。この製剤の組成及び計算により求められたアセトニトリル含量の推定値(実際に取り得る値のうちの最大値に相当する)を下記の表に示す。

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医薬品添加物1はオプション1の限度値に適合しているが、原薬、医薬品添加物2及び製剤は適合していない。

しかしながら、この製剤はオプション2の PDE 値4.1mg/day には適合しているので、本ガイドラインの勧告には適合していることになる。

次に、やはりアセトニトリルを残留溶媒とした別の例を挙げる。この製剤も1日最大服用量は5.0g であり、2種類の医薬品添加物を含んでいる。この製剤の組成及び計算により求められたアセトニトリル含量の推定値(実際に取り得る値のうちの最大値に相当する)を下記の表に示す。

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この例においては、積算の結果では、製剤はオプション1の限度値にも、オプション2の PDE 値にも適合していない。

この場合、製造業者は、製剤化の工程でアセトニトリルの含量を減らすことができているかどうか、製剤の試験を行って調べることができる。

製剤化の工程によってもアセトニトリルの含量が許容される限度値以下に減らせない場合は、製造業者は、製剤中のアセトニトリル含量を減らすための手立てを講ずべきである。

すべての手立てを講じても、溶媒の残留量を許容されるレベルまで減らせなかった場合、例外的なケースに限られるが、製造業者は、本ガイドラインの勧告値に適合させるべく溶媒の残留量を減らすために行ってきた努力についての要約、及びその製剤がなぜガイドラインの勧告値を超えるレベルの残留溶媒を含むにもかかわらず必要とされるのかを示すリスク-ベネフィットの観点からの考察の内容を提出することができる。 

(4)分析方法

残留溶媒の測定法としては、ガスクロマトグラフ法のようなクロマトグラフィーの手法が一般に用いられる。可能ならば、薬局方に収載されている国際的に調和された残留溶媒測定法を用いるべきである。

個別のケースでは、製造業者は最も適切なバリデートされた分析法を自由に選んでよい。クラス3の溶媒しか存在しない場合には、乾燥減量などの非特異的方法を用いてもよい。

残留溶媒の分析法のバリデーションは、ICH の2つのガイドライン(「分析法バリデーションに関するテキスト(実施項目)(Q2A:平成7年7月20日薬審第75 号薬務局審査課長通知)」及び「分析法バリデーションに関するテキスト(実施方法)(Q2B:平成9年10月28日医薬審第38号医薬安全局審査管理課長通知)」)に従うべきである。 



(5)報告すべき残留溶媒のレベル

医薬品の製造業者は、本ガイドラインの要請に応えるために、医薬品添加物中又は、原薬中の溶媒の含量に関する情報を必要としている。

下記の項目は、医薬品添加物又は原薬の供給業者が医薬品の製造業者に提供すべき情報の例として記載したものである。

医薬品添加物又は原薬の供給業者は、下記の記載の中から該当するものを選択すればよい。

ア クラス3の溶媒のみが存在すると考えられる場合乾燥減量が0.5%未満であること 

イ クラス2の溶媒(X、Y など)のみが存在すると考えられる場合すべての溶媒がオプション1の限度値未満であること(原薬又は医薬品添加物の供給業者は、X、Y などで表わされるこれらのクラス2の溶媒の名称を示す必要がある。)

ウ クラス2の溶媒(X、Y など)及びクラス3の溶媒が存在すると考えられる場合クラス2の溶媒がオプション1の限度値未満であり、かつクラス3の溶媒が0.5%未満であることクラス1の溶媒が存在すると考えられる場合には、それらの溶媒を同定し、定量する必要がある。

「存在すると考えられる」という表現の対象は、製造の最終工程で使用された溶媒及び最終工程よりも前の工程で使用されたが、バリデートされた工程によってもいつも除くことができるとは限らない溶媒である。

クラス2又はクラス3の溶媒の残留量が、それぞれオプション1の限度値又は0.5%を超えている場合には、それらの溶媒を同定し、定量する必要がある。

 

 

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アセトニトリル
飲み込むと有害のおそれ(経口)
皮膚に接触すると有毒(経皮)
強い眼刺激
遺伝性疾患のおそれの疑い
中枢神経系、呼吸器の障害
長期又は反復ばく露による中枢神経系、呼吸器、腎臓、血液系、肝臓の障害のおそれ

 

クロロベンゼン
吸入すると有害(蒸気)
皮膚刺激
強い眼刺激
遺伝性疾患のおそれの疑い
発がんのおそれの疑い
全身毒性の障害
眠気及びめまいのおそれ
長期又は反復ばく露による中枢神経系、末梢神経系、血液系の障害、肝臓、腎臓、副腎の障害のおそれ
飲み込み、気道に侵入すると有害のおそれ

 

クロロホルム
飲み込むと有害(経口)
重篤な皮膚の薬傷・眼の損傷
重篤な眼の損傷
遺伝性疾患のおそれの疑い
発がんのおそれの疑い
生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い
肝臓、腎臓の障害
眠気又はめまいのおそれ
長期又は反復ばく露による中枢神経系、腎臓、肝臓、呼吸器の障害
水生生物に毒性

 


1,4-ジオキサン
吸入すると有害
皮膚刺激
強い眼刺激
発がんのおそれ
中枢神経系の障害
呼吸器への刺激のおそれ
眠気またはめまいのおそれ
長期にわたる又は反復ばく露による腎臓、肝臓、中枢神経系の障害
長期にわたる又は反復ばく露による呼吸器の障害のおそれ