2019年11月10日から17日にかけて、化学物質過敏症を発症した年齢と時期についてツイッター上でアンケートを呼びかけました。
アンケートにご協力くださった皆様、ありがとうございます。
本稿では、アンケート結果を踏まえつつ、化学物質過敏症をとりまく環境について考察いたしました。
化学物質過敏症 発症年齢
アンケート時期 2019年11月10-17日
回答数232
化学物質過敏症 発症時期
アンケート時期 2019年11月10-17日
回答数244
5年以内(2014年11月以降)の発症者が63%、10年以内(2009年11月以降)の発症者が78%となっています。化学物質過敏症は、ここ5年の間に爆増している恐れがあります。
考察 2015年時点での推定患者数
2015年に行われた、医学者による調査では、化学物質過敏症は、成人の7.5%と見積もられていました。
2010年に新潟県上越市で行われた、市内の全小中学生を対象とする調査では、平均して12.5%の児童に、化学物質過敏症の症状がみられるという結果になっています。
以上の情報をもとに単純計算すると、
2015年総人口 127,640,000人
0-19歳人口 23,499,000人 × 0.125 = 293万人
20歳以上人口 104,141,000人 × 0.075 = 780万人
293万人 + 780万人 = 1073万人 となります。
考察1 この10年間に起きた特筆すべきこと
化学物質過敏症の発症機序は明らかになっていませんが、一般に、免疫力を下げるといわれる事象については、わきまえておいたほうがよいかと思います。
この10年の間に起きた、「免疫力を下げると言われている」特筆すべき事象は、下記の通りです。
- ①レベル7の原発事故による放射能汚染
- ②薬品摂取量の増加
- ③布用除菌スプレーの市場拡大
- ④高残香性の柔軟剤ブーム
- ⑤遺伝子組み換え食品の消費拡大
- ⑥季節性インフルエンザワクチン接種者が増加
- ⑦人工甘味料の普及
①レベル7の原発事故による放射能汚染
2011年3月に発生した大地震と、それに続く原発事故によって、広い範囲が放射能に汚染されてしまいました。
出典:国立環境研究所
たえず被ばくすると、病気にかかりやすくなるというのは、世界共通の認識です。
人間にはDNAの損傷を修復するシステムが本来備わっているが、放射線を絶えず浴びるとこの修復システムが追いつけなくなる。それがこうした病気の原因となる。スーザン・ボース氏(swissinfo 取材記事より)
②薬品摂取量の増加
医薬品摂取量は増える一方です。平成29年度、処方せん発行枚数は8億枚でした。
不必要な抗生物質が処方されてきたことから、薬剤耐性菌の増加が問題になってきています。
出典:厚生労働省
③布用除菌スプレーの市場拡大
布用除菌スプレーが販売されたのは1998年。商品名が除菌スプレーの代名詞となるなど、わずか10年で100億円の売り上げを誇るまでに成長しました。
その一方で、除菌のしすぎによって、免疫力が機能しなくなる可能性も指摘されています。
④高残香性の柔軟剤ブーム
衣類に香りをつけ、それが長持ちすることをうたった洗濯用柔軟剤、香り付き柔軟剤などとも呼ばれる。
従来は部屋干しによるにおいや汗のにおいを抑えることを目的とした微香タイプが主流だったが、アメリカP&Gが販売する「ダウニー」など、海外製の香りの強いタイプが2009年ごろから日本でも人気になった。国内メーカーも追随し、仕上がりのよさよりも香りを強調した製品が相次いで発売された。同じブランドでも香りが異なる製品がいくつも発売される例も多い。
その一方で、こうした柔軟剤の香りによって不快感や体調不良を訴える人も増加。国民生活センターが13年9月に発表した調査によると、全国消費生活情報ネットワーク・システムに寄せられた柔軟剤のにおいに関する相談は、08年度には14件だったが、12年度は65件と5倍弱に増えている。
頭痛や吐き気、せきなどの体調不良を訴える例も目立っており、同センターではメーカーに対して、利用者が過剰な使用を控えるように啓発活動を行うことを求めている。
イミダス編
引用:高残香性柔軟剤 | 時事用語事典 | 情報・知識&オピニオン imidas - イミダス
⑤遺伝子組み換え食品の消費拡大
画像引用:バイテク情報普及会
厚生労働省は「遺伝子組み換え食品は安全」としていますが、アメリカでは「遺伝子組み換え食品の安全性は証明されていない」という認識が広まりつつあります。
NPO法人「The Non-GMO Project」 が「遺伝子組み換えでない」ことを証明する認証制度を作り、下記のようなラベルによる、消費者にわかりやすい情報提供をしています。
⑥季節性インフルエンザワクチン接種者が増加
インフルエンザワクチンの集団接種が始まり、これが廃止された経緯、そしてワクチン接種が推奨されるようになった経緯は下記の通りです。
1977年に予防接種法が制定され、1977-87年の期間、小・中学生に対して「学校内で集団でのワクチン接種」が実施されていました。
1987年、副反応への配慮から、保護者の同意を得た希望者にのみ実施するよう法律が改正され、さらに1994年には、予防接種法の対象疾病からインフルエンザが削除され、任意接種へと切り替わりました。
小中学生への集団ワクチン接種廃止後、肺炎やインフルエンザにかかって亡くなる高齢者が増加したため、2001年、高齢者向けインフルエンザの予防接種を促進するため、 対象疾病にインフルエンザが追加されました。
予防接種法の一部を改正する法律 厚生労働省健康局結核感染症
一方で、インフルエンザワクチンを毎年接種した子供は、ウイルス特異的CD8⁺T細胞免疫の発達が阻害されるという報告もあります。
出典:厚生労働省
小中学生への集団接種が廃止された頃の患者発生数
季節性インフルエンザワクチン接種が推奨され始めた1994年頃の患者発生数
インフルエンザ患者発生状況 2002-2012
インフルエンザ患者発生状況 2013-2015
出典:国立感染症研究所
⑦人工甘味料の普及
10年くらい前から、糖分やカロリーをおさえた商品が人気を博しています。糖質ゼロ・オフ食品の市場規模は、2014年から2017年にかけて倍以上になっています。糖分やカロリーを抑えるために使われるのは、人工甘味料です。
人工甘味料には中毒性があり、肥満を悪化させたり、鬱や不眠などの精神疾患を引き起こす恐れがあるほか、腎機能が低下し、脳卒中や心筋梗塞などの血管系疾患の発症リスクを高めるというデータが集まりつつあります。
www.ryutsuu.biz
考察2 化学物質過敏症、ここ5年で2000万人に?
化学物質過敏症を診断できる病院は、10年程前までは、数日内に受診予約できていました。それが、最近では半年待ちになっています。
ツイッターアンケートによると、化学物質過敏症の約8割が10年以内(2009年以降)の発症者です。5年以内(2014年以降)の発症者は、全体の6割以上に及びます。
2015年時点での推定患者数が1073万人だったとすれば、推定患者数が2000万人になっていてもおかしくないことになります。
国を挙げて検証し、早急な対策をすべき事案ではないかと思われます。