一般社団法人化学物質過敏症・対策情報センター

推定患者数1000万人。化学物質過敏症と共生できる社会は、誰もが安心して暮らせる社会。

琉大ジャーナル 学生新聞が注目してくれた!化学物質過敏症

 

琉球大学人間社会学科(社会学専攻)マスコミ学コースが発行する学生新聞に、化学物質過敏症についての概説とともに、私へのインタビュー記事が掲載されました!

 

大学生が化学物質過敏症について興味をもってくれて、色々勉強してくれて、当事者に取材してくれて、そして記事にしてくれるなんて、本当に有難いことです。

 

以下、記事の転載です。

 

琉大ジャーナル第72号 2022年7月17日発行

明日は我が身 化学物質過敏症

 

 「今、元気な人に明日は我が身と気づいてもらいたい」

 一般社団法人化学物質過敏症・対策情報センターの代表理事の上岡みやえさん(56)は、ある日化学物質に過敏に反応する体になったという。現在、症状は劇的に改善し、自身の経験を伝える講演会を行っている。

 誰でも症状が現れる可能性がある化学物質過敏症。患者は、回りの化学物質に反応して、せきやめまい、頭痛、吐き気、息苦しさ、不安感などの症状が現れるが、この症状や度合いには個人差がある。日本における推定患者数は1千万人、詳しい発症メカニズム、どの物質に反応するのか、治療法はまだ研究段階だ。

 環境ジャーナリストの加藤やすこさんが運営する「いのち環境ネットワーク」の会報73号によると、近畿大学医学部、環境医学・行動科学教室の水越厚史先生が環境過敏症に関してアンケート調査を行っているという。

 2013年、上岡さんは勤務先で突然締め付けられるような頭痛、指先や唇のしびれ、めまいに襲われ、24時間365日その症状に悩まされた。周りで香水や柔軟剤の匂いがすると力が抜け、立てなくなることや意識を失うこともあった。

 「いつ何時、意識を失うかわからないので、ものすごく怖かった。」上岡さんは、かつてこの病気を紹介していた番組を思い出し、化学物質過敏症なのではないかと感じたという。

 社会から化学物質をなくすことは不可能だが、化学物質から自分を守る方法はあると上岡さんはいう。日用品にどんな化学物質が使われているのかを知ることや、できるだけ化学物質を避けることが大切だ。

 患者の症状を和らげるために回りが配慮することも必要だ。上岡さんは職場の同僚の協力があり、少しずつ症状が良くなった。しかし、症状の改善には時間がかかる。「みんなが協力したからといって、次の日に大丈夫になるかといったらならない。ここに難しさがある」と語る。

 また、当事者が不安と恐怖で混乱していることを理解するのも重要だという。「苦しんでいる人がいたら、安心してと声をかけてあげてほしい。」

 上岡さんが代表理事を務める一般社団法人化学物質過敏症・対策情報センターは、化学物質過敏症の理解促進や診断書が作れる体制を求め、昨年11月に沖縄県議会に請願書を提出した。この請願は現在、審議中だ。

(赤嶺利治)

参考文献

水城まさみほか(2020)「化学物質過敏症対策」緑風出版

加藤やすこ「いのち環境ネットワーク」会報73号

 

 

化学物質過敏症とは?

 ごく微量な化学物質によって突然引き起こされる化学物質過敏症(Multiple Chemical Sensitivity)

 この病気は、高濃度の化学物質に曝露するか、もしくは長期的に低濃度の化学物質に曝露することによって、化学物質に過敏になり症状が現れる。誰でも発症する可能性があるが、自覚していない患者も多い。殺虫剤やタバコの煙、マスクに使われる不織布、柔軟剤、シャンプー、香水、制汗剤などに含まれる化学物質に反応してしまう。

 しかし、化学物質は年々増え、どの化学物質に反応しているのかを特定するのは非常に困難だ。日常生活の化学物質を避けたり減らしたりすることが不可欠だ。また、栄養バランスの良い食生活と適度な運動で免疫力を高めることも必要だ。

 2009年、厚生労働省は化学物質過敏症を病名リストに登録した。しかし、日本には化学物質過敏症を診断できる医師が少ない。そのため誤った診断を受けた患者もいるという。また社会的にも知られていないのが現状だ。

 国や市町村、私たちが化学物質過敏症について理解し、積極的に行動することが、患者を救う一歩となる。

(赤嶺利治)