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代替療法と科学的エビデンス Nature 意見記事翻訳

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代替療法のプラセボ効果についての意見記事 Consider all the evidence on alternative therapies 「代替療法に関するエビデンスを検討する」(2015年10月14日)の翻訳です。

 

替療法に関するエビデンスを検討する
Consider all the evidence on alternative therapies


「代替療法のメカニズムを完全拒否するのではなく、調査し、そのメカニズムを組み込んでみてはどうか。」Jo Marchant

 

 

院とレイキ・セラピスト

「非常識!」「冗談なの?」「病院がやるべきことではない」

イギリスのプリンセス・アレクサンドラ病院NHSトラストが、エッピングでレイキ・セラピストを雇う予定であるというニュースへの、Twitterの反応です。

セラピストの年俸は、最高で22,236ポンド(34,000米ドル)になるそうです。セラピストは、こう言いました。

「がんの旅にともなう、肉体的、感情的、スピリチュアルな問題に対応できるように、患者にレイキ/スピリチュアル・ヒーリングを提供します」

これには、「レイキ・セラピーに《科学的エビデンス》はあるのか?」という批判が殺到しました。

このような批判をする人たちは、《科学的エビデンス》そのものを、見直してみる必要がありそうです。

《科学的エビデンス》は、代替療法の利点を全否定することが、短絡的で見当違いであることを示しているからです。

 

 

学的エビデンスとは

はっきり申し上げておきますが、私自身は、レイキやスピリチュアル・ヒーラーの疑似科学的主張に賛同しているわけではありません。

人の「エネルギー・フィールド」を利用して閉塞を取り除き、体を癒すことができるというレイキ・セラピーに《科学的エビデンス》はありません。

多くの代替療法と同様、レイキ・セラピーには、偽薬よりも優れた効果はないものの、それは、レイキ・セラピーに治療的価値がまったくないことを意味してはいません。

深刻な病気に悩む人々の、複雑な心理的反応、生理学的反応、その治療方法を、単なるプラセボ効果として却下することは、有用とはいえないからです。

神経科学の研究によって、プラセボ効果には、薬物を投与したときと同等の効果、生理学的反応を引き起こす可能性があることが示されています。

例えば、パーキンソン病患者の脳にドーパミンを放出させる、痛みのある人々に大量のエンドルフィンを放出させる、といった具合にです。

《科学的エビデンス》に基づく議論では、それは見当違いだとされてきました。

代替療法が生理学的反応を誘発するとしても、懐疑論者は、《科学的エビデンス》のある標準治療を受けることを勧めます。患者は、標準治療によって「プラセボ効果」も「薬物の活性効果」も得られるからです。

これは、プラセボ効果の性質を正しく理解していない人の意見です。偽薬・偽治療が、すべて同じというわけではないからです。

 

 

ラセボ効果 

プラセボ効果とは:

本来は薬としての効果を持たない物質によって得られる効果。 デンプンなどを使い、薬のように見せた物を偽薬またはプラセボ(プラシーボ)と言います。

 

代替療法は、標準治療よりも、大きな効果を引き出す場合があります。

たとえば、ある試験では、偽の鍼治療は、偽の錠剤よりも効果的に、痛みを緩和しました。(T. J. Kaptchuk et al. Br. Med. J. 332, 391–397; 2006)

別の例では、薬物を投与するよりも副作用少なく、過敏性腸症候群の症状を和らげることができました。(T. J. Kaptchuk et al. Br. Med. J. 336.、999–1007; 2008)。

実証試験によって「偽治療に効果がない」と証明できない療法には、セラピストが主張するほどの効果はのぞめない、というのは事実です。

しかし、それが十分に大きなプラセボ効果を発揮する場合、最良の治療法になるかもしれないのです。

こうした意見は、医薬品の薬効が高く、プラセボ反応が小さい場合には、どうでもよいものです。

しかし、慢性的な痛み、うつ病、吐き気、疲労など、数値化しにくい主観的症状(治療中のがん患者にかかわる問題でもある)に苦しむ人たちは、代替療法に頼る傾向があります。

このような患者に薬物を投与すると、不快症状や中毒症状など負の側面が出ます。薬効の大半は、プラセボ反応であることが多いのです。

共感力の高いセラピストによる1時間セラピーを受けた患者は、薬物投与よりもはるかに多くの効果を得られるうえに、副作用問題とも無縁でいられる可能性があります。

しかも、レイキや鍼(はり)には、通常のプラセボ効果を超える効果があるのです。

代替療法の治療効果が高いのは、施術者が患者に「回復する」とだますのが得意だからではありません。

彼らが提供する施術の要素 ~ 話すことや触れること ~ には、症状を和らげ、身体的効果を引き出す力があるようなのです。

こうした要素は、対照試験の両群に存在するため、偽治療と比較しても、見分けることができません。

治療効果の高い代替療法は、間接的な利用が可能です。たとえば、鍵穴手術(脳外科手術。必要な開頭の範囲を最小限にとどめ患者様の身体的な負担とリスクをおさえる術式)など侵襲的処置の最中に、患者の不安を抑えられれば、心拍数の変動リスクを減少させることができるでしょう。

代替療法は、生理機能へ直接的効果を与えることができるほか、鎮静剤や鎮痛剤を低用量で必要とする患者にも応用できると思われます。

投薬時間を守るために、スタッフに過負担を強いることになる従来型の医療では、人間的なケアができないことが多々あります。

 

 

替療法の可能性

ならば、代替療法の施術者を採用してみてはどうでしょうか。そうすれば、代替療法を規制しつつ、患者が必要とする標準治療を提供できます。

アメリカには現在、このような「統合医療」を行っているアカデミックな医療機関が多数存在します。

カリフォルニアのスタンフォード統合医療センターは、化学療法の副作用を緩和するために鍼治療を行っています。

「鍼治療が、標準治療を完遂させることに役立つならば、生存率が改善するかもしれない」と言うセラピストもいます。

こうした取り組みを、危険なインチキ療法だと批判する人もいます。

オーラやエネルギー・フィールドなどの非科学的な治療法をとり入れてしまうと、魔法のような考え方が広まり、これまでの薬物やワクチンに対する信頼が損なわれると言うのです。

真っ当な反論ではありますが、代替療法を否定することに、《科学的エビデンス》があるわけではありませんし、患者が求めるものからも乖離してしまいます。

やみくもに代替療法を否定するかわりに、代替療法から学んでみてもよいのではないでしょうか。

偽薬以上の治療効果が望めるのなら、今までのように無視せずに、向き合ってみるのです。

代替療法の有効成分(儀式、精神的イメージ、共感、ケア、希望など)を引き出して、それらがどのように機能するのかを学び、患者のケアに組み込む方法を見つけていく必要があるでしょう。