一般社団法人化学物質過敏症・対策情報センター

推定患者数1000万人。化学物質過敏症と共生できる社会は、誰もが安心して暮らせる社会。

化学物質過敏症 説明会@沖縄県庁舎議会棟 2023年5月30日(火)


化学物質過敏症 説明会

日 時    2023年5月30日(火)
場 所    沖縄県庁舎 議会棟
話 者    一般社団法人化学物質過敏症・対策情報センター 代表理事 上岡みやえ (おきなわSDGsパートナー団体)

 

 

 

 

説明会 主旨

・化学物質過敏症とは何か

・社会的対策を講じることが急務

・「化学物質過敏症に関する請願」の意義について

 

 

化学物質や香料による体調不良者、県立学校で634名

「県内の全ての公立学校において毎年4月に行われる健康診断の問診票に、化学物質過敏症に関する質問事項を追加してほしい」(2021年11月)

という請願書の要望を通して、沖縄県立学校の健康診断問診票(2022年)に「化学物質や香りによって体調不良になったことがある」という質問が加えられました。

これは、子どもたちの体調不良を、室内環境学的な視点から把握しようとする質問であり、日本の学校・健康行政上、極めて画期的な事例といえます。

その結果、沖縄県立学校では、634名の生徒が、化学物質や香料によって体調不良になっていることが判明しました。本件は、琉球新報が取り上げてくださったこともあり、全国的な注目を集めています。

化学物質とは何か、香りとは何かについて説明したうえで、よりくわしい質問をしていくと、さらに多くの体調不良者が見つかるかもしれません。

一社)化学物質過敏症・対策情報センターが提出した請願書には、横浜国立大学大学院・中井里史教授(室内環境学)が考案くださった問診票、化学物質過敏症研究の世界的第一人者クラウディア・ミラー博士が考案した問診票(QEESI)を添付していましたが、2022年度の沖縄県立学校の問診票には採用されていません。

本日は、知られざる国民病・化学物質過敏症について、毎年4月に必ず行われる健康診断を、環境汚染物質と体調不良との関係性について理解いただく機会ととらえて、専門家が考案した問診票を導入することの意義を説明させていただきます。

 

 

化学物質過敏症を守ること = 全員を守ること

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 







 

 

 

 

人口減少スピードが加速している!

 

総人口の推移(平成17年10月~23年10月/2005年10月~2011年10月)

 

総人口の推移(平成17年10月~26年10月/2005年10月~2014年10月)



総人口の推移(平成22年10月~令和3年10月/2010年10月~2021年10月)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

規制より大切!学校での注意喚起!



 

 

 

 

 

受理番号 :第4号
付託委員会:文教厚生委員会
受理年月日:令和3年11月26日
付託年月日:令和3年12月8日
件名   :化学物質過敏症に関する請願
提出者  :一般社団法人 化学物質過敏症・対策情報センター 上岡 みやえ
紹介議員 :翁長 雄治

 

【要旨】
 化学物質過敏症は、ごく微量の化学物質に反応して体調不良を起こす疾病であり、発症のきっかけ、症状及びその度合いは個人差が大きいことが特徴である。化学物質過敏症が悪化すると、学校へ行くことも働くことも困難になる。肉体的苦痛はもちろんのこと、周囲の無理解による精神的苦痛、生活が破壊されていく恐怖、経済的な困窮、将来に対する不安感などは、筆舌に尽くし難い。
 2015年に発表された疫学調査によると、化学物質過敏症の有病率は成人の7.5%に上り、子供の発症者も増えている。しかし、この病について知る医療従事者は少なく、社会的認知度も低い。化学物質過敏症の診断書を書ける医師は国内に数名しかおらず、不適切な処置により体調を悪化させている人が多いことが懸念されている。化学物質過敏症を発症させない、悪化させないために、社会的対策を講ずる必要がある。

 

【記】
1 県のホームページに化学物質過敏症の情報を掲載すること。ポスター・チラシを作成し、県内の保健所、役所及び公立病院に掲載・配布すること。
2 県内の全ての公立学校の養護教諭向けに、化学物質過敏症の勉強会を開催すること。
3 県内の全ての公立学校において毎年4月に行われる健康診断の際に、教員及び保護者向けに化学物質過敏症の説明文書を配布すること。
4 県内の全ての公立学校において毎年4月に行われる健康診断の問診票に、化学物質過敏症に関する質問事項を追加すること。
5 県内の全ての公立病院において、化学物質過敏症の診断書を発行できるようにすること。

 

【解説】

1 県のホームページに化学物質過敏症の情報を掲載すること。ポスター・チラシを作成し、県内の保健所、役所及び公立病院に掲載・配布すること。

➢ 沖縄県と那覇市の公式サイトには化学物質過敏症のページが追加されました。感謝。那覇市保健所ではポスターを作成くださいました。
大きな前進ですが、化学物質過敏症について知る人が増えたとは言い難い状況です。


2 県内の全ての公立学校の養護教諭向けに、化学物質過敏症の勉強会を開催すること。

3 県内の全ての公立学校において毎年4月に行われる健康診断の際に、教員及び保護者向けに化学物質過敏症の説明文書を配布すること。

4 県内の全ての公立学校において毎年4月に行われる健康診断の問診票に、化学物質過敏症に関する質問事項を追加すること。

 

2・3・4
子どもたちに安全な学習環境を提供するためには、養護教諭、教員、保護者に向けて化学物質過敏症についての説明を継続することが効果的です。カナダの労働安全衛生局は、化学物質過敏症患者を守り、共生していくにはどうすればよいかという指針を提供しています。カナダやアメリカでは、企業や大学が、化学物質過敏症の社員を守るための取り組みを始めています。日本では化学物質過敏症患者は1000万人と推定されています。その多くが自覚なき患者です。知られざる国民病ともいえます。

増え続ける化学物質過敏症患者に着目することで、埋もれた患者をすくいあげることができるとともに、環境汚染物質と体調不良との相関性への理解を広めていくことができます。

 


5 県内の全ての公立病院において、化学物質過敏症の診断書を発行できるようにすること。

診断書がないために、職場や学校で窮地に立たされる人が激増しています。

化学物質過敏症は、診断基準も治療法も確立されていませんが、日本でも海外でも、化学物質過敏症の診断書を発行している医師はおられます。

厚生労働省や専門家と協力しあって、診断基準を発行できるように進めていただきたいです。

 

※「化学物質過敏症に関する請願」は、2023年5月現在、沖縄県議会に設置されている「文教厚生委員会」にて<継続審査中>です。

 

 

健康診断問診票

化学物質過敏症・対策情報センターが2021年11月に提出した「化学物質過敏症に関する請願」を受けて、翌2022年、県立学校の健康診断問診票に「化学物質や香りで体調が悪くなったことがある」という一行が追加されました。

 

画像

 

毎年必ず実施される学校の健康診断のときに配布される<健康問診票>に、「化学物質や香りによって具合いが悪くなったことがある」という発想や視点が導入されることの意義は大きいです。

この質問に対して、県立学校634名の生徒が<イエス>と回答しました。

これを受けて、沖縄県教育委員会は「香りで悩む人がいることへの配慮」を呼びかけてくれました。

 


大きな前進ではありますが、請願書では「県内の全ての公立学校」にて化学物質過敏症に関する質問事項を追加することを要望しています。

環境汚染物質によって体調不良をおこしている児童を見つけ出すためには、「県内の全ての公立学校」にてよりくわしい問診票をとりいれていくことが必要です。

 

請願書には、一流の専門家が考案した下記問診票を「質問例」として添付しています。

 

化学物質過敏症/香料過敏症に対応する質問例

 

◆横浜国立大学大学院環境情報研究院 中井里史教授 考案◆

以下のものを使用したり、触れたりした際に、発疹やじんましんを起こす、あるいは気持ちが悪くなるなど、体調がすぐれなくなることがありますか。(はい/いいえ で回答する)

①洗濯用洗剤
②衣料用漂白剤
③柔軟剤
④衣料用防虫剤
⑤芳香剤
⑥線香
⑦殺虫剤(スプレータイプ)
⑧文具(マジック、ノートなど)
⑨塗料
⑩家具・建材

 

※中井里史教授は、化学物質の使用に伴うヒトの健康リスク、生態リスク、ベネフィット評価に基づいて化学物質を管理するためのモニタリングと経済評価、ダイオキシン、PCBs、重金属、医薬品、室内汚染物質、及び生態リスク評価・管理等についてケーススタディを行っておられる研究者です。

 

 

◆ミラー博士(Dr.Claudia Miller)考案 QUEESI ◆

化学物質への反応を0から10までで11段階評価する(0=問題なし 5=中程度
10=最悪)

①   ディーゼル排ガス、エンジン排ガス
②   タバコの煙
③   殺虫剤
④   ガソリン(ガソリンスタンドで給油中に漂ってくる臭い)
⑤   塗料 または シンナー 
⑥   掃除用品:消毒剤・漂白剤・浴室用洗剤・床用洗剤 
⑦   特定の香水、芳香剤、合成香料など
⑧   液体タール または アスファルト
⑨   マニキュア、除光液、ヘアスプレー
⑩   新しい家具:新しいカーペット、ビニール製の新しいシャワーカーテン、新車の内装
⑪   上記以外にも暴露すると具合が悪くなる化学物質があればかき出して、11段階評価してください。

 

※ミラー博士(Dr.Claudia Miller)は、 TILT(Toxicant‐Induced Loss of Tolerance: 有害物質が誘発する不耐症)研究者です。ミラー博士が共同執筆した論文はWHO(世界保健機関)のMacedo賞を受賞するなど、この分野における先駆者であり、世界トップクラスの研究者であり、QEESIという問診票の開発者でもあります。

 

医師がおこなった疫学調査によって、化学物質過敏症の有病率は成人の7.5%と判明しているのに、化学物質過敏症の社会的認知度は、極端に低いままです。これは、国民的危機といえるのではないでしょうか。

 

日本政府ならびに沖縄県が推進するSDGsには

 

SDGs3.9

2030年までに、有害化学物質並びに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる

 

という目標が掲げられています。これを推進するには、生活環境中に存在する「有害化学物質」についての理解を深めていくことが欠かせません。


毎年必ず行われる健康診断のときに、上記のような質問をとりいれていくことを、積極的に支持する人が増えていかない限り、有害化学物質による体調不良者は増えていくばかりとなります。その先にあるのは、医療費増大、コロナ禍で経験したような医療機関のパンク、更なる人口減少、そして地球環境の破壊です。

 

 

 

 

公立病院で化学物質過敏症の診断書を発行してほしい

沖縄県議会2023年3月23日の文教厚生委員会では、化学物質や香りで体調不良になったことがある生徒が、県立学校だけでも634名いることをうけて、瀬長美佐雄(せながみさお)県議が、「県内すべての公立病院にて化学物質過敏症の診断書を出せるようにしてほしい」という5つ目の要望について「早急に対応いただきたい」と要求してくれました。

今のところ、「県内すべての公立病院にて化学物質過敏症の診断書を出せるようにしてほしい」という要望は、「標準化された診断基準が確立されていない」として保留されています。

診断基準が確立されていないのは事実ですが、化学物質過敏症の診断書が、国内外で発行されていることもまた事実です。

日本では、化学物質過敏症の成人有病率は7.5%です。診断基準がないために、無策のまま放置されている人、誤診されて体調を悪化させている人は、増え続けています。

 

化学物質過敏症の診断基準を作成し、少なくとも公立病院では診断書を発行できるようにすることが急務です。