一般社団法人化学物質過敏症・対策情報センター

推定患者数1000万人。化学物質過敏症と共生できる社会は、誰もが安心して暮らせる社会。

こうして私たちはダマされるーーーあきれ返るほどエグいPFASの現実

1. 有機フッ素化合物(PFAS)とは

有機フッ素化合物(PFAS)とは、炭素とフッ素が強く結びついた構造をもつ化学物質のファミリーの総称です。現在その種類は約12,000にのぼり、今も増え続けています。

PFASは「水や油をはじく」「熱や薬品に強い」という特徴を持ち、調理器具のコーティング、防水スプレー、消火剤など幅広い製品に使用されています。

その中でもPFOSとPFOAは、長年「主力選手」として大量に使われてた有機フッ素化合物(PFAS)です。

PFASとPFOS/PFOAは、どれも4文字で似ているため混同しやすいのですが、意味はまったく異なります。

PFASは1万2千種類以上ある有機フッ素化合物の総称で、その中の代表例がPFOSとPFOAです。

  • PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)
    スコッチガードなどの防水防汚処理、泡消火剤、カーペットや繊維加工に使用。

  • PFOA(ペルフルオロオクタン酸)
    テフロン™(PTFE樹脂)の製造工程で「乳化剤」として利用され、フライパンのノンスティック加工に不可欠でした。

この2種類は世界的に広く使用され、環境と人体に強い影響を残してきました。

2. PFOSとPFOAの安全基準値は強化された・・・が?

2024年、米国環境保護局(EPA)はPFOSとPFOAについて、飲料水中の基準値を大幅に引き下げました。

  • 従来(2009年〜2016年):暫定基準は 70 ppt(1兆分の70)

  • 2022年:暫定的な健康勧告値では PFOA=0.004 ppt、PFOS=0.02 ppt という「ほぼゼロ」に近い数値を提示

  • 2024年(法的規制値確定):PFOS=4 ppt、PFOA=4 ppt

従来の70 pptから比べると約17分の1に厳格化されたことになります。
健康勧告値と比べればやや緩やかになったとはいえ、法的拘束力を持つ「4 ppt」という数値は、これまでの規制よりはるかに厳しい水準です。

こうした動きは日本でも注目され、専門家から「参考にすべき事例」として評価されています。

例えば、科学技術振興機構(JST)サイエンスポータルの記事 「全国でPFASの検出相次ぎ、政府が対応策『水の安全確保』へ」には、「アメリカ環境保護庁(EPA)が、有機フッ素化合物(PFAS)にさらされている1億人を守るために、史上初の全米基準を決めた」と書かれています。

そして、新基準(4 ppt)は、日本の暫定目標値(50 ng/L=50 ppt換算)より12.5倍厳しいと評価されています。

また、モニタリング義務化や支援施策も「日本にとって参考になる取り組み」として説明されています。

 

 


2. 代替物質の存在

規制が強化されたのは喜ばしいことですが、そこには大きな問題が隠されています。

● この規制強化の対象は、 PFOSとPFOAの2種類だけ。

● PFOSとPFOA以外の有機フッ素化合物(PFAS)12000種類は、ほとんどすべて規制されていない。野放し状態。

● 主要メーカーは、20年前からPFOSを、10年前からPFOAを、使用中止している。

主要メーカーは、すでに10~20年前から、工業的に広く使われていた、かつての「主力選手」PFOSとPFOA の製造・使用をやめているのです。

そして、PFOSとPFOAの代わりに

GenX(HFPO-DA)

ADONA

フルオロテロマー系

などの有機フッ素化合物(PFAS)が、毒性データが乏しいまま、今の「主力選手」として工業的に広く使われています。

これらもPFOSやPFOAと同じ有機フッ素化合物(PFAS)のファミリーなので、環境中に長く残ります。

しかし、これらの代替物質の飲料水中の安全基準は、まだ設けられていません。

 


補足:代替PFASが使われている身近な製品

「フリー表示」されていても、代わりに代替PFASが潜んでいることがあります。
以下のように、私たちの生活のごく身近な製品に広く使われているのです。

🍳 調理器具

  • フライパンや鍋のノンスティック加工(テフロン™加工)

  • ベーキングシート、オーブン用紙

👟 撥水・防汚加工製品

  • 防水スプレー(靴、衣類、カバン用)

  • アウトドア用ジャケットやレインコート

  • カーペットやソファなどの防汚加工

🍔 食品包装

  • ハンバーガーやピザの紙容器

  • ポップコーンの袋、ベーカリー用耐油紙

  • ファストフードチェーンの包装紙

🔥 消火剤

  • 空港や工場で使われる泡消火剤(AFFF)

💄 化粧品・パーソナルケア製品

  • 耐水性・長持ちをうたうファンデーション

  • マスカラ、リップ、ネイル製品の一部

こうしてみると、PFOSとPFOAの代わりとして使用されている有機フッ素化合物PFASが、私たちの毎日の生活に入り込んでいる「身近な化学物質」であることがよく分かります。

それなのに、代替PFASについては、飲料水中の安全基準値すら設けられていないのです。

 


3. アメリカのPFAS規制に関する日本のマスコミの姿勢

事例:朝日新聞(2025年5月15日掲載)
「米国がPFAS規制を緩和 基準値達成を2029→31年に後ろ倒し」

記事では、アメリカ環境保護庁(EPA)が、PFOS+PFOAの基準を 70 pptから各4 pptに厳格化したことを「世界的にも厳しい規制」と評価する一方で、基準達成の期限が延長されたことも伝えています(“緩和”とは基準値の緩和ではなく、達成期限の後ろ倒しを意味します)。

こうした報道は「アメリカは厳しい、日本は遅れている」という印象を強めます。

しかし、現在の主力選手「代替PFAS」が規制対象外であるという重要な点は指摘していません。他社の報道も似たりよったりです。ゆえに、代替物質の危険性について知ることができません。

その結果、アメリカでは有機フッ素化合物(PFAS)が規制されたという印象ばかりが強くなり、「アメリカではPFAS問題は解決した」と誤解する人が増えているのです。

 



4. 本当に注目すべきは「代替PFAS」

アメリカの規制強化は確かに評価すべき動きですが、実際にいま私たちの生活環境に最も深く入り込んでいるのは PFOSやPFOAではなく、それらの代替として導入された有機フッ素化合物(PFAS)です。

具体的には――

  • GenX(HFPO-DA):PFOAの代替として開発され、フライパンや調理器具のコーティング工程などに使用。動物実験では肝臓や腎臓への影響、免疫系の異常、発がん性のシグナルが報告されている。

  • ADONA:同じくPFOAの代替物質。毒性データが乏しいにもかかわらず広く使われており、分解されにくく環境中に長く残ると指摘されている。

  • フルオロテロマー系(6:2 FTSなど):PFOS代替として撥水加工や消火剤に使用。残留性や毒性が問題視され、環境への長期的影響が懸念されている。

これらはいずれも有機フッ素化合物(PFAS)ファミリーの一員です。つまり、「PFOSフリー」「PFOAフリー」と表示された製品でも、その安全性が証明されたわけではない、別のPFASが使われいるのです。

さらに問題なのは、これら代替PFASが 規制の網から外れている という現実です。

PFOSやPFOAについては4 pptという厳しい基準が設定されましたが、代替PFASにはまだ明確な飲料水基準が設けられていません。

つまり、「昔の主力」は厳しく規制されたけれど、「今の主力」は野放し、何の規制も基準も設けられていないのです。

では、なぜこの重要な点が一般にあまり知られていないのでしょうか? 

理由はシンプルです。メディアの多くが「アメリカでは安全基準値が下げられた」「アメリカは日本より厳しい」という“わかりやすい部分”だけを切り取って報じているからです。

ニュースで繰り返し「アメリカは進んでいる」と言われれば、消費者は

● アメリカのマネをすればOKだと思い込む

● PFOSとPFOAばかりに注目し、今使われている有機フッ素化合物(PFAS)があることに気づけない

科学的には「PFOSやPFOAの安全基準が厳格化されれば安心」という状況では決してありません。

毒性データが十分に揃っていない新しい有機フッ素化合物(PFAS)が広く使われているため、脅威が消えたわけではなく、むしろ、深刻になっている可能性があるのです。


5. まとめ

アメリカ環境保護庁(EPA)が飲料水中のPFOS・PFOA基準を大幅に引き下げたことは、一見すると、規制が進んだように見えます。

しかし、それは すでに主力ではなくなった物質だけ を対象にした規制です。

いま実際に使われているのは GenX や ADONA、フルオロテロマー系などの代替PFASであり、これらの安全性は十分に検証されていません。

残念ながら、飲料水中の残留基準もまだ設けられていません。

私たちに迫っている有機フッ素化合物(PFAS)の脅威

マスコミも専門家も指摘しない問題点

  • 「PFOSフリー」「PFOAフリー」と表示されても、代替物質は同じPFAS仲間

  • 新しいPFASのリスクはまだ解明されていない

  • 今の規制の動きだけでは、生活環境に潜む危険を十分にカバーできない



専門家やマスコミが指摘すべきは、「もう使われていない物質への厳格な規制」ではなく、いま現在、私たちの身近で使われ続けている物質の安全性なのではないでしょうか。