
化学物質過敏症や香害に苦しむ人が、学校や会社などの社会で生きていこうとするとき、当事者の説明や努力だけではどうにもならない場合が多いです。
化学物質過敏症や香害に関する社会的認知度を高め、誰もが安心して暮らせる社会にしていくことが必要です。
本記事では、誰もが安心して暮らせる社会にしていくために、誰でも実行できる、簡単で、時間もお金もかからない方法を解説していきます。
- 🔵当事者の努力だけではどうにもならない
- 🔵社会を変える突破口は学校
- 🔵請願・陳情という正攻法を活用する
- 🔵請願・陳情が失敗する理由
- 🔵第2第3の壁への通行証ができた!
- 🔵数は力:あなたの参加が社会変化をもたらす
- 🔵陳情書を提出することは幸せな作業
🔵当事者の努力だけではどうにもならない
一社)化学物質過敏症・対策情報センターの代表理事は、2013年11月に職場で化学物質過敏症を発症しました。その後も、無理をしながら3年間、会社勤めを続けました。
その3年間、苦しむ当事者と周囲の間にどのようなトラブルが起きるのか、それがどんなに大変なことか、身をもって経験しました。
痛みや倦怠感に耐えながら、生活のため、解雇されないように必死に頑張って仕事をしていても、「ニオイがつらい」と訴えただけで、「迷惑な人」「わがままな人」になってしまう。
正しく理解してもらおうと、説明すればするほど孤立する。
「香料で具合が悪くなるなんて、聞いたことがない」
「あなたはおかしい」

肉体的にも精神的にも地獄です。
勤務中に、同僚が使った香水や汗拭きシートのニオイ、タバコの残り香などで脱力して倒れてしまうことがよくありました。
ストレートパーマをかけたばかりの子が入室しただけで、目が焼けるように痛くなり、涙が止まらなくなったこともありました。
毎日、何が起きるかわからない恐怖と不安でいっぱいでした。
周りの人に迷惑をかけないよう、耐えて、耐えて、耐えて、それでも辛くて「協力してほしい」とお願いしてみると、何ら落ち度のない同僚や会社を糾弾しているみたいな言われ方をされたりしました。
苦しくて廊下でうずくまっていると「邪魔よ」「迷惑よ」と言われたこともあります。
「私には、好きな香水や柔軟剤を使う権利があるはずだ、なぜあなたに合わせなくてはならないのか」と怒られたこともあります。何度もです。色々な人にです。
芳香剤のせいで会社のトイレを使えなくなり、総務部に相談すると「そんなこと言うのはあなただけ、もっとニオイをきつくしてほしいという人ばかりなのよ」と門前払いされました。

地獄の3年間でしたが、同じチーム内に寄り添ってくれる人がいてくれたおかげで、ギリギリのところで、何とかもちこたえていました。しかし、2016年に骨折・内臓損傷して瀕死状態になったため、退職せざるを得なくなりました。
・・・経験から断言します。
化学物質過敏症や香害に苦しむ人が、学校や会社などの社会で生きようとするとき、「苦しんでいる当事者の努力や説明」だけではどうにもなりません。
化学物質過敏症では、体調が劇症化することがあります。そうなったときは、学校や会社に所属する人すべての理解と協力が必要になります。周囲の理解と協力が得られない場合、社会で生きていくことは不可能になります。
・・・たかが香料製品のために?
・・・あまりにも理不尽です。
だから、自分の周囲に協力要請するだけではなく、社会を変えていく必要があります。
🔵社会を変える突破口は学校
社会を変える・・・そんなこと、できないに決まっている。そう思われるかもしれませんが、突破口はあります。「学校」です。
毎年4月に学校で実施される健康診断の際に配られる問診票は、
✅定期的に
✅誰一人とりこぼすことなく
✅自分事として向き合ってもらえる
情報ツールのひとつだといえます。
この健康診断問診票に「化学物質や香りによって体調不良になる」という「一行」が追加されたとしたらーーーーー
これまでは「個人のわがまま」や「原因不明の不調」として片付けられてきた問題が、学校行政が取り組んでいる「健康課題」なのだと認識してもらえます。
これは空想物語ではありません。
当センターの請願によって、沖縄県教育委員会は、2022年度から、沖縄県立学校の健康診断問診票に、「化学物質や香りによって体調不良になる」という質問を追加してくれました。
「ある市の教育委員会」(事実関係は確認済みですが、教育委員会名は出さないでほしいといわれたため伏せます)は、市教育委員会の「独自判断」によって、2024年度から、市立小中学校の健康診断問診票に「香りへの配慮が必要である」という質問を追加済みです。
学校には毎年たくさんの子どもたちが入学し、進級していきます。
子どもたちの背後には、多種多様な属性の「保護者」がいます。
健康診断問診票が少し変わるだけで、子どもたちとその保護者に、「香りによって体調を崩す人がいる」という事実が伝わります。
さらには「自分(や自分の子ども)の不調は、香りが原因だったのかもしれない」と気づくきっかけになります。
これが10年、20年と続いていった時の社会的インパクトは、想像を絶するほど大きなものになります。

🔵請願・陳情という正攻法を活用する
健康診断時の問診票に質問を追加してもらうために
健康診断時の問診票に「化学物質や香りによって体調不良になる」という質問を追加してもらうための、もっとも確実な方法は「請願」「陳情」です。
請願・陳情とは、地元議会に提出する「要望書」です。
「請願(陳情)」は憲法に明記されている「国民の権利」です。
役所の窓口に出向いて説明するのは自由ですが、役所の人たちにも無視する自由があります。しかし、議会には「請願(陳情)」を審査する義務があります。
そのため、すべての議会が「請願(陳情)」するためのフォーマットを用意しています。必要事項を記入し、郵送するだけで、請願(陳情)できるので、役所の窓口で相談するよりも、はるかに簡単なうえに、必ず審査してもらえるというメリットもあります。
当センターは、学校の健康診断という仕組みを利用して、化学物質過敏症や香害の認知を広げていきたいと考え、議員に相談しつつ、請願・陳情に関する経験を積んできました。
請願・陳情すること自体は簡単です。
しかし、ほとんどの場合、失敗します。
実際に請願書や陳情書に関する経験を重ねていく過程で、請願や陳情が失敗する理由についても、ある程度わかってきました。
そこで、当センターは、誰が請願・陳情しても成功する「ロードマップ」と「陳情書のテンプレート」を作ることにしました。
2026年の今、そのロードマップが完成しつつあります。
くわしくはこのブログにて👇
🔵請願・陳情が失敗する理由
一社)化学物質過敏症・対策情報センターが、これから請願・陳情をしていってくれるってこと? 私はいま、化学物質過敏症や香害に苦しんでいるけど、待っていれば、社会は良くなっていくのね?
そう期待されるかもしれませんが、残念ながら、そこまで簡単ではありません。
日本には、1788の地方議会があります。それらすべてに、化学物質過敏症・対策情報センターが請願または陳情したとしても、失敗する確率のほうが高いです。なぜなら、以下のような「壁」が存在するからです。
第1の壁)地元在住者の要望審査が優先される
議会に寄せられた要望(請願・陳情)のうち、優先的に審査されるのは地元在住者の要望です。
沖縄県では、北海道在住者の要望よりも、沖縄県在住者の要望を、優先的に審査する・・・当たり前と言えば当たり前の話です。
当センターが所在していない市議会に陳情書を提出したところ、放置されたまま2年が経過し「審査未了」として棄却されたことがあります。
これは、陳情書の内容が良い悪い以前の問題です。
第2の壁)社会的認知度が低い
社会的認知度が低い課題は、真剣に審議されない傾向があります。化学物質過敏症や香害は、まさに「社会的認知度が低い」ことから、議員に軽視されやすいです。
第3の壁)議会質問されていない
社会的認知度が低い課題であっても、議会質問(議員が議会で取り上げること)されたことがあると、その課題に関する要望(請願・陳情)は、採択される可能性が高くなります。
地元議員にコンタクトして状況を説明し、議会質問してほしいとお願いすることが必要ですが、他人に近寄ることが困難な化学物質過敏症の人には、高いハードルです。
🔵第2第3の壁への通行証ができた!
請願書(陳情書)の成功確率をあげるには、これら3つの壁を突破しなくてはなりません。それぞれ大変ですが、第2第3の壁については、これを突破できる状況が整ってきました。
それが、文部科学省が全国の教育委員会あてに配布した文書です。

2023年(令和5年)7月14日、消費者庁が発した「消安全第260号」文書は、文部科学省を通じて、全国の都道府県・指定都市教育委員会の学校保健担当課へコピー配布されました。
文部科学省は、
✅全国の教育委員会に対して
✅関係団体等に対する(常識的に考えて「学校」)
✅その香り困っている人もいる件について
✅更なる啓発活動
を求めています。
つまり、学校で香害対策(香料過敏症は化学物質過敏症の症状の一つなので、化学物質過敏症に関する啓発も必要になる)することは、中央省庁の要請を具体化することになるのです。
中央省庁からの要請は、「社会的認知度が低い」「議会質問されていない」という「壁」に向き合わなくてすむ「通行証」になります。
陳情書に以下のように書き込めます。
◆文部科学省の協力依頼との整合性:
令和5年7月14日、文部科学省は全国の教育委員会に対して、消費者庁からの協力依頼文書「消安全第260号:「その香り困っている人もいます」ポスター公表について(周知)」を配布し、香りによる体調不良について啓発するよう依頼しています。つまり、本要望は、文部科学省/消費者庁の協力依頼を具体化するものです。
私たちに市民には、このような文書が作られたことを知るルートがありません。当センターも、この文書の存在を2年以上存じませんでした。
消費者庁と文部科学省の通達は、ネットリサーチをしているときに、偶然出会ったものです。この「偶然の賜物」のおかげで、当センターの陳情は無敵フェーズに到達したと言えるまでになりました。
こうしたことも踏まえつつ、以下のブログをお読みになってみてください。
陳情書のテンプレートもここに👇掲載しています。
🔵数は力:あなたの参加が社会変化をもたらす
文部科学省の通達は、陳情書審査過程に待ち受ける第2第3の壁を通り抜けるための「通行証」として使えます。
しかし、第1の壁「地元在住者の要望審査が優先される」ことだけは、当センターの単独活動では乗り越えることができません。
✅そこにお住まいのあなたが
✅お住まいの地域の地方議会に陳情する
ことが必要です。
ひとりでも多くの人が、当センターが作成した陳情書テンプレートを使って、お住まいの地域の地方議会(県議会または市町村議会)に提出くださるようになれば、化学物質過敏症や香害への社会的認知が進みます。
あなたの参加が必要です。
数は力だから。
逆に言うと、数がそろわない限り負け確定です。
無敵フェーズに到達した「陳情書」をコピーして、地元議会に郵送する。
✅かかる時間は30分
✅かかる費用は110円
✅陳情者の名前は秘匿される
✅失うものは何もない
体調が悪くても、辛くても、これなら、どなたでもトライできるはずです。
🔵陳情書を提出することは幸せな作業
議会に陳情するとは、こういう社会であってほしいという願いを、政治行政に届けることです。
願いが実現されるかどうかは、やってみなければわかりませんが、陳情書を提出した暁には、あなたは、
「何もしなかったあなた」
から
「政治行政に願いを届けたあなた」
へと変わります。
社会や制度を変えられるかどうかは関係ありません。
行動した「あなた」を、誇りに思う「あなた」がいる。
この感覚こそが、陳情書を提出することで得られる、いちばん確かな価値なのかもしれません。