一般社団法人化学物質過敏症・対策情報センター

推定患者数1000万人。化学物質過敏症と共生できる社会は、誰もが安心して暮らせる社会。

香りへの配慮 消費者庁と文部科学省の見解

 

🔵香害:香りによる体調不良

香水や柔軟剤、洗剤、消臭剤などの香りによって、頭痛や吐き気、呼吸困難などの体調不良を起こす人がいます。

この問題は「香害(こうがい)」呼ばれるようになり、ここ数年、社会問題として知られるようになってきました。そして国レベルでは、すでに「周囲の理解と配慮が必要な問題」として整理が進められています。

 

 

🔵5省庁連名の香害ポスター

2021年、5省庁連名(消費者庁・文部科学省・厚生労働省・経済産業省・環境省)の「その香り、困っている人がいるかも?」というポスターが作成されました。

その2年後の2023年には、同じく5省庁連名で、「その香り、困っている人もいます」という、改訂版ポスターが作成されています。

 

 

🔵消費者庁:各省庁に香害啓発活動を依頼

2023年(令和5年)7月11日、消費者庁は、「その香り困っている人もいます」ポスター公表について(周知)という件名で、総務省・文部科学省・厚生労働省・経済産業省・国土交通省・環境省に「関係団体等に対する更なる啓発活動に御協力ください」と依頼しています。



画像:消費者庁「その香り 困っている人もいます」ポスター公表について(令和5年7月11日)

出典:茨城県

 

🔵文部科学省:消費者庁からの依頼文書を全国の教育委員会へ配布

2023年(令和5年)7月14日、消費者庁が発した「消安全第260号」文書は、文部科学省を通じて、全国の都道府県・指定都市教育委員会の学校保健担当課へコピー配布されました。

 

画像:文部科学省 「その香り困っている人もいます」ポスター公表について(令和5年7月14日)

出典:茨城県

 

📌重要ポイント📌

「関係団体等に対する更なる啓発活動に御協力の程よろしくお願いいたします(消費者庁/文部科学省)」


つまり、2023年(令和5年)7月14日時点で、全国の都道府県・指定都市教育委員会には、文部科学省を通じて

✅消費者庁が発した消安全第260号文書が配布されていた

✅「その香り困っている人もいます」ことについて、「更なる啓発活動」をすることが依頼されていた

わけなのです。

 

🔵省庁からの通達が示していること

消費者庁から出された公文書の内容と、それが文部科学省を介して全国の教育委員会宛てに配布されているという事実は、以下のように整理できます。

📌香りによって体調不良を起こす人がいることは、国として把握されている

📌周囲への配慮を呼びかけることは、国の施策として位置づけられている

📌教育現場も、その周知対象に含まれている

 

こうした情報は、2023年7月に提供されているので、2026年2月現在、学校内部ですでに、香りに困っている人に関する理解が進んでいて然るべきです。

また、学校保健安全法第4条によって、学校には、児童や先生が健康に過ごせるよう、学校の建物や環境、運営のしかたを整える責任があると定められています。

仮に、学校が、香りに困っている人に関する啓発活動を怠っていたうえに、香害相談をした保護者を蔑ろにしたり、他の児童や保護者への協力を要請しなかったとしたら、学校に非があることになります。

 

 

🔵香害への取り組み:先行事例の紹介


沖縄県では、当センターが2021年に沖縄県議会に提出した請願書がきっかけとなって、2022年度から、沖縄県立学校の健康診断問診票に「化学物質や香りによって体調不良になったことがある」という質問が追加されました。

香害は、即解決することが難しい、複雑な社会問題である一方、そのことを知る人はほとんどいません。ゆえに、沖縄県のように、学校から継続的な情報提供がなされることには、大きな意義があります。

健康診断時の問診票に、香りに関する質問があると、体調不良になっている子どもが可視化されますし、質問それ自体が、香りによる体調不良者を増やさないための情報提供にもなります。

学校で毎年実施される健康診断の際に、香りに関して質問されることの意義も効果も絶大です。


🔵請願書/陳情書を提出してみませんか?

現実問題として、ほとんどの教育委員会と学校は、文部科学省からの通達を見落としています。あるいは、意味を理解していません。

学校は、自主的に、香りに困っている人に関する啓発活動をすべき
香害相談をした保護者を蔑ろにしてはならない
他の児童や保護者への協力を要請すべき

立場にあることを理解し、自主的に対応している学校は、稀です。今のままでは、文部科学省からの通達は「絵に描いた餅」になってしまいます。

そうさせないためには、地方議会あてに、「学校で具体的な香害対策を求める陳情」を提出し、学校が、この問題の当事者であることを認識してもらったうえで、具体的対応をしてもらうようにすることが望ましいです。

そうしない限り、学校で香害対策がなされる確率は、きわめて低いです。

香害に苦しんでいる方、特に、香害に苦しんでいるお子さんの保護者の方にはぜひ、学校の健康診断問診票に香害に関する質問を追加してほしいと要望する「請願書」「陳情書」を、地元議会に提出することを検討いただきたいです。

「請願書」「陳情書」を通して要望が実施されるようになれば、香害を理解する人が増え、香害に苦しむ人への配慮が進んでいくはずです。

請願/陳情の際には、本ブログ記事から以下のことを理解し、役立てていただけると幸いです。

 

✅消費者庁は、総務省・文部科学省・厚生労働省・経済産業省・国土交通省・環境省に対して、「香りによって困っている人」に関する「啓発活動」を求めている。

✅それを受けて、文部科学省は、全国の教育委員会にあてて、「香りによって困っている人」に関する「啓発活動」を求める文書(消費者庁からの通達「消安全第260号」)を配布済みである

✅沖縄県教育委員会の事例によって、健康診断問診票への「香害に関する質問追加」は可能であることが示されている。

この要望は、文部科学省から全国の教育委員会に依頼された内容に合致するものであり、すでに県や市での導入実績があるのです。

これを不採択とする場合、委員会には、誰もが納得できるだけの理由を提示していただく必要があります。


【補足】

一社)化学物質過敏症・対策情報センターは、市議会や町議会に「健康診断問診票に香害に関する質問を追加してほしい」という請願書や陳情書を提出したものの、不採択になったといういう経験をしてきています。

不採択となった理由は以下の通りです。

  • 時間だけが過ぎた(長期間、要望を審議せず放置し、審査未了とされた)

  • 国が細かく定めていないから、市町村では対応できない 

  • 健康診断は国の管轄だから、市町村では対応できない

これらは果たして、法律・管轄・裁量範囲などに照らし合わせた上での審査結果だったのでしょうか?

📌文部科学省から全国の教育委員会に、香りによって体調不良になる件への啓発活動を求める文書が配布されている

📌沖縄県の先行事例が存在する

ことを踏まえれば、こうした対応や説明は、議員や行政職員の制度理解が不正確だった、あるいは、国からの通達を見落としていた結果によるものだったと判断せざるを得ません。


1)本来、公文書にあたるべき責務を負っているのは議員と行政職員

地方議会の制度設計では、陳情・請願の審査において、次のことが前提とされています。

✅議員は、職務として
✅必要な法令・通達・先行事例を
✅自ら調査し
✅判断材料を整えたうえで
✅採択・不採択を決める

つまり、請願・陳情を「審査する」とは、調査と検討を経たうえで、制度に組み込むことの適切性を判断することを意味します。

陳情者が、法令や通達、先行事例をすべて提示しなければ審査ができない、という制度設計にはなっていません。

要望内容にかかる法律・管轄・裁量範囲などを調べ、整理し、判断材料とすること自体が、議会に課された職務なのです。

議員は

✔ 公費で活動している
✔ 調査権限を持っている
✔ 行政に照会できる
✔ 職員を通じて資料収集できる
✔ 専門部署に問い合わせできる


👉 一般市民とは比較にならないほど
👉 「調べられる権限」をお持ちです。


もし、議員や行政職員が、陳情者に調査や資料収集までもを担わせようとするならば、委員会審査は「議員が調査のうえ審査する制度」から「市民が公文書までもを揃えた案件だけを審査してあげる制度」に変質します。

仮に、議員が調査権を行使せずに、行政職員の説明だけを鵜呑みにして、採択/不採択を決定することは、🔥本来、委員会が果たすべき責務を、委員会自ら放棄すること、委員会の存在意義を自ら否定すること🔥と同義です。

2)市民が公文書を示すことは、本来的にはおかしい

そもそも、一般市民には、中央省庁がどのような文書を、どこにあてて配布したかなど、知る由もありません。本記事に掲載した「消費者庁発」「文部科学省発」の公文書は、当センターが、茨城県教育庁 のサイトで 偶然見つけたものにすぎません。


請願・陳情の審査は、

市民:問題提起・要望の表明
議会:調査・検証・判断
行政:制度の運用

という役割分担を前提として設計されています。


議員や教育委員会が、公文書も調べもせず、先行事例さえも確認せず、市民から正式に提出された要望を採択/不採択にしているとすれば、それは🔥地方自治と民主主義の根幹を揺さぶる、極めて切迫した問題🔥だと言わざるを得ません。

 

最後に

本記事では、議会あてに「学校の健康診断時に化学物質過敏症や香害に関する質問を加えてほしい」という要望を請願/陳情する際、委員会審査の判断材料になりうる通達や先行事例を紹介しました。

請願書/陳情書には、ここで紹介した通達や先行事例を組み込むほうが、採択してもらいやすくなるはずです。

通達や先行事例を調べることは、本来的には議員と行政職員の役割ですが、調査しない議員と行政職員によって不当な決定が下されている現実を鑑みると、入手できた資料は提出したほうが良いことになります。

ただし、一般市民には、公文書が存在するかどうかさえ知りえないのに、市民みずから公文書など関連資料を探し出して添付し、法律・管轄・裁量範囲を調べ、提示しなければ、不採択になるという事態は異常であることも、ご承知おきいただきたいです。

同様の請願/陳情に取り組みたい方には、こうしたことを理解したうえで、本記事にて紹介した公文書や先行事例を、うまく活用いただきたいと願っています。

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