
柔軟剤や洗剤、香水、消臭剤などの香料によって、頭痛、吐き気、咳、めまい、思考力低下などの体調不良が起きる現象を「香害(こうがい)」といいます。
香害に悩んでいることを伝えると「気にしすぎ」「好みの問題」などと言われて孤立し、苦しむ人も増えています。
本記事では、香害に遭ったときに、今ある制度を用いて対処する方法をお伝えします。
1. 香害は「好みの問題」ではなく「健康問題」
香害(こうがい)とは、柔軟剤、消臭スプレー、合成洗剤、香水、芳香剤などの製品に含まれる合成香料(化学物質)により、不快感や健康被害が生じることです。
香害は、香りの好き嫌いの話ではなく、日常生活に支障をきたす健康問題・社会問題として認知されつつあります。2021年には5省庁連名の香害啓発ポスターが作られ、2025年には学会調査によって小中学生の1割が香害を経験していることが判明しています。
香害の症状は、 頭痛、めまい、吐き気、のどの痛み、倦怠感、息苦しさ、アレルギー症状など多岐にわたります。化学物質に反応して体調不良になる「化学物質過敏症」の症状のひとつと言われています。
香害が原因で職場を退職せざるを得なくなった、学校に通えなくなった、介護サービスを受けられなくなった、などの事例が報道されています。
2. まず行うべきは「状況を切り分ける」こと
香害に遭ったとき、最初に意識したいのは、問題を整理することです。
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どのような香りか(柔軟剤、香水、洗剤、芳香剤など)
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どこで発生しているか(職場、学校、公共交通機関、近隣住宅など)
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いつ、どの程度の頻度で起きているか
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体調にどのような変化が出ているか
原因と状況を切り分けておくことで、「個人的な感覚」ではなく「再現性のある環境問題」として扱いやすくなります。
3. 記録を残すことが自分を守る
香害は周囲から軽視されやすいため、記録しておくことが大切です。
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日時・場所
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香りの種類や強さ
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体調症状(頭痛、吐き気、呼吸の違和感など)
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その場を離れた後の回復までの時間
これらを簡単にメモしておくだけでも、説明に説得性が生まれます。
4. 体調不良があれば医療機関を受診する
症状が続く場合や日常生活に支障が出ている場合は、医療機関を受診しましょう。その際、「香料にばく露した後に症状が出る」と伝えることが大切です。
化学物質過敏症や香料過敏症が疑われる場合、現時点では診断基準や治療法が確立されていないため、適切な医療を受けられる可能性は低いです。
それでも、医療機関を受診し、症状とばく露状況をカルテに残しておくことが、後の配慮要請や制度的対応を進めるうえで重要な意味を持ちます。
5. 周囲へ配慮を依頼する
法律上、学校や病院、企業などの「事業者」には、利用者や労働者の安全に配慮する義務が課せられています。そのため、香害に苦しんでいることは、特定の個人に伝えるのではなく、まずは「事業者」に相談し対策してもらうことが望ましいです。
教室内での香害は学校に、職場での香害は勤務先に、近隣の香害は「不動産管理会社」「マンション管理組合」「自治会」などに相談し、関係各位に通達するよう依頼してみましょう。
以下のように伝えることで、「配慮」の話として受け止めてもらいやすくなります。
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健康影響が出ていること
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医師からも環境要因の可能性を指摘されていること
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特定の製品や個人を責めたいわけではないこと
すべての事業者が法律にくわしいわけではないため、事業者に課せられている安全配慮義務について説明することも大切です。
くわしくは 社会的バリア香害 & 後ろ盾にできる法律 をお読みください。
6. 188への電話相談
香害に遭ったら、消費者庁が設置している、消費者製品問題の電話相談窓口 188(消費者ホットライン)へ電話することも大切です。
柔軟剤や香水の強い香りに苦しみ、頭痛や倦怠感、呼吸のしづらさに悩んでいても、「188に寄せられた相談件数」がゼロだと、行政にとっては「存在しない問題」になってしまうからです。
188に電話した内容と相談件数は全国的に集計され、中央省庁と地方自治体で共有されます。
くわしくは 香害に困ったら・・・188(消費者ホットライン)に電話しよう!
7. 市町村議員への相談
香害は、市町村の議員に相談することで、
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行政担当部署への橋渡し
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公共施設での配慮要請
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啓発ポスターや周知の検討
など、個人では動かしにくい部分が進むことがあります。
8. 市町村議会へ請願/陳情
議員から要請し、香害対応してもらったとしても、その対応には継続性がありません。継続的な香害対策を求める場合、都道府県議会や市町村議会に請願/陳情することが望ましいです。
請願・陳情には、次のような特徴があります。
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議会と行政で問題が共有される
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議事録や公式文書として記録に残る
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自治体の担当部署が、調査・検討・対応しなくてはならない
味方になってくれる議員がいる場合は、
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請願書/陳情書の書き方を相談する
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提出する際の注意事項などを助言してもらう
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議会での扱われ方を一緒に考える
といった形で、請願/陳情を進めやすくなります。
味方になってくれる議員がいない場合でも、請願・陳情という正規ルートを使えば、個人の相談を社会的な課題として正式に提示することができます。それが、香害や化学物質過敏症の問題を、継続的に改善していくための土台になります。
くわしくは 化学物質過敏症に関する請願 情報ハック をお読みください。
おわりに
香害に遭ったとき、無理に我慢したり、自分の感じ方を疑ったりする必要はありません。香害は、個人の感覚の問題ではなく、環境と健康の問題です。
記録を残し、必要な配慮を求め、制度の中で是正を図る。その一歩一歩が、同じように困っている人の道しるべになります。