
毒か薬かは「量」で決まる
──パラケルススの格言をどう受けとめるべきか?
16世紀の医師パラケルススは、こんな言葉を残しました。
「すべての物質は毒である。毒でないものはなく、量が毒か薬かを決める。」
この考え方は、現代の毒性学の基本にもなっています。
たとえば──
・水を飲みすぎれば「水中毒」になる
・塩や酸素も、摂りすぎると身体に悪影響が出る
・ビタミンやミネラルも、過剰摂取すると体調不良を引き起こす
どんなに「身体にいい」とされる物質でも、量が過ぎれば毒になる。
逆に、「毒」とされる物質でも、微量なら薬になることもある。
パラケルススの格言は、このような「量と毒性」の関係を示しています。
でも、いま私たちが暮らしている社会は、彼の時代とはまったく異なっています。
現代社会では、「日常的に使われている“化学物質の量”」が、あまりにも多いのです。
「微量だから安全」と言える時代だろうか?
シャンプー、リンス、化粧品、香水、柔軟剤、除菌スプレー、殺虫剤……。
これらには香料や揮発性有機化合物(VOCs)、防腐剤、界面活性剤など、さまざまな化学成分が配合されています。
メーカーは「配合量はごくわずか。だから安全です」と説明します。
それは、「ひとりが、ひとつの製品を、1日に1回だけ使った場合」を前提とする話です。
しかし今、この地球上では、数十億もの人々が、多種類の化学物質が配合された製品を、毎日、何種類も、人によっては何十種類も、そして何度も使っています。
この現実、無視されすぎてはいないでしょうか?
🔬シャンプーのワンプッシュに含まれる香料の重さはどれくらい?
シャンプーのワンプッシュに使われている香料って、重さにするとどれくらいなんでしょうか? 柔軟剤の計量キャップ1杯には、どれくらいの香料が配合されているのでしょうか?
① 1回あたりの使用量
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シャンプーの1プッシュ = 約3〜5mL(=約3〜5g)
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柔軟剤の計量キャップ1杯 = 30mL前後(=約30g)
👉 これはメーカー公式情報や家庭での計量から確認されている数字です。
② 製品に含まれる香料の“割合”
香料成分の配合率は、製品によって異なりますが・・・
| 製品タイプ | 香料の一般的な配合量 |
|---|---|
| シャンプー・ボディソープ | 0.1〜1.0% |
| 柔軟剤(香り強め) | 1〜5% |
| 香水 | 10〜25%(エタノール溶液中) |
🧪 論文や業界資料でも、**「化粧品や日用品に含まれる香料は0.1〜5%」**という記述が一般的です。
③ 計算例:
▷ 柔軟剤(1回30g)で香料が2%入っていたら
→ 0.6g の香料が使われる
▷ シャンプーのワンプッシュ(3g)に香料が1%入っていたら
→ 0.03g(=30mg)の香料が1回で使われる
🧾 参考文献
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Steinemann, A. (2016). Fragranced consumer products: Exposures and effects from emissions. Air Quality, Atmosphere & Health.
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日本化粧品技術者会(SCCJ)資料:化粧品における香料の配合比率
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CIR(Cosmetic Ingredient Review):Fragrance Ingredient Safety
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香料産業会(IFRA)公表ガイドライン:用途別濃度
🌍 地球規模で見たら、どうなる?
ここでは、あくまで一つの目安として、「1日に1人0.1gの香料を空気中に放出している」と仮定して、世界規模での影響を考えてみましょう。
この仮定の根拠は以下の通りです。
✅ 日用品(シャンプー・柔軟剤・ボディソープなど)をひとつ選ぶだけなら、1回あたりの香料は0.01〜0.3gが相場。
✅ 実際の生活では、シャンプー+トリートメント+洗剤+柔軟剤+香水…など複数の商品を使っている。
したがって、
「1日あたりの香料使用量:0.1g」は、やや控えめな仮定として妥当です。
もし、世界中で、50億人が、毎日これらの製品を使い、1人あたり0.1gの香料を空気中に放出しているとしたら、それは、どのくらいの重さになるのでしょうか?
📌 1日あたり: 5,000トン
📌 1年あたり:1,825,000トン
つまり、控えめに見積もっても、1年間に約180万トン以上の香料が、大気中に放出されていると推定できるわけです。
その規模感については、以下のグラフをご覧ください。

💀「毒性は量で決まる」── ならば、総量は?
1回のシャンプーに含まれる化学物質は、どれもごく微量ですが、懸念すべきは、様々な種類の化学物質が一度に体に入ってくることです。
たとえば香料、防腐剤、抗菌剤、可塑剤など、それぞれ単体では「安全」とされていても、組み合わさることで使用量が増えたり、化学反応を起こして新しい物質ができてしまう可能性もあるのです。
そしてもう一つ、見逃せないのが「体内への蓄積」。
私たちの体には、不要な化学物質を外に出すための解毒システム(肝臓や腎臓など)があります。
でも、毎日少しずつ何年も取り込み続けると、処理が追いつかず、脂肪や細胞にたまっていくことがあります。
特に香料などの脂溶性の化学物質や、最近よく使われているナノ粒子は要注意です。
🧬 ナノ粒子は、体の奥まで入り込む
ナノ粒子とは、髪の毛の太さの1万分の1ほどの、超微細な粒子です。肉眼では見ることができません。
でもこの超微細な粒子は──
✅ 肺の奥まで入り込んで、肺胞から血液中に取り込まれる
✅ 肌に触れたとき、皮膚のバリアを通過する可能性がある(特に傷や湿疹があるとき)
✅ 一度体に入ると、脳や胎盤、細胞内部にまで到達するという報告もある
(参考:Oberdörster et al., 2005, Environmental Health Perspectives)
ナノ粒子は香料の「カプセル化技術」などにも応用されており、洗剤や柔軟剤、化粧品などの日用品に使われているケースも増えています。
現代社会では、私たちは、知らず知らずのうちに、空気とともにナノ粒子を吸い込んだり、皮膚からナノ粒子を吸収したりしてしまっているのです。
体内に取りこまれたナノ粒子が、脳や胎盤、細胞の中にまで到達しているなんて、恐ろしいとは思いませんか?
つまり──1回1回は微量でも、「複数×長期×ナノ化」の時代では、油断できない蓄積リスクがあるのです。
毒性を「1つの商品だけ」で判断するのでは、どうにもならない時代になっています。
日本の安全基準の基礎も「パラケルススの考え方」
日本の化学物質に関する安全基準は、多くが**「量の理論」=閾値モデル**をベースにしています。
| 分野 | 基準 | 設定根拠 |
|---|---|---|
| 食品添加物 | 一日許容摂取量(ADI) | 動物試験で得た無毒性量の1/100 |
| 化学物質(大気・水質) | 環境基準・指針値 | 長期曝露でも影響が出ないレベル |
| 労働安全衛生 | 作業環境基準(TLVなど) | 曝露リスク評価にもとづく |
| 日用品・化粧品 | 自主基準やガイドライン | 皮膚刺激・吸入毒性などの評価 |
これらはすべて、「ある程度の量を下回っていれば安全」という考え方で設計されています。
✅ 見落とされているポイントとは
安全基準は「ひとつの製品」「想定される使用量」に基づいて作られています。
でも現実には──
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複数の製品を同時に使う人も多い(重複曝露)
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揮発性化学物質は空気中に広がり、他人にも影響を与える
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ホルモンかく乱物質など、閾値がない影響も存在する
🔺 世界全体で向き合わなくてはならない大問題
これからは「使用量」そのものに目を向けるべき時代
毒性の話をすると、「法律で認可されてるから大丈夫」「検査済みだから安心」と言われがちです。
だからといって安全とはいえない時代になってしまいました。
私たちが今、本気で向き合い、考えていかねばならないのは、以下のような点です。
-
自分が使っている製品から、どれだけの化学物質が出ている?
-
それは、家族や近隣にどう影響している?
-
同じ成分を、いくつの製品で重複して使ってる?
-
そして──地球上の全員が同じ使い方をしていたら、どうなる?
🌱 小さな選択が、未来の空気を変える
パラケルススの格言は、いまや、「自分がどれだけ使っているか」だけでなく、「社会全体で、どれだけ使われているか」を考えない限り、無意味なものになりつつあります。
商品のひとつひとつは安全だとしても、複数の商品を使う、長期間にわたって使う、大勢で使うなどすれば、安全とはいえない量になってしまいます。
そしてその影響は、自分だけでなく、まわりの人や子どもたちにも及んでしまうのです。
🧠 今、必要なのは「暮らし方」そのものを見直すこと
パラケルススの「毒性は量で決まる」という考え方は、今も多くの安全基準の根拠になっています。
しかし、今の世界では、80億もの人々が、毎日、何十種類もの化学製品を使っています。それらは、全体として、私たち人間にも、地球環境にも、地球上の動植物にも、影響を与えるレベルになっているのです。
もはや「少ししか使っていないから大丈夫」は通用しないのです。
では、どうすればいいのでしょうか?
答えはシンプルです。
🍀化学製品を使わないライフスタイルに変えていく🍀
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もちろん、香り柔軟剤など「香害」によって生活困難に陥る人が増えていることは、社会として対応すべき大きな問題ですが、ご自身の命と健康と生活を守るには、より大きな視点から、体系的に網羅的に自助努力することも必要です。
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命と生活、そして将来を守るには、「暮らしの安全性」を高めていくことが必要です。
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どう対処すればいいのか?
それに気づき、対応できるようになることが、真の安心をもたらしてくれます。