画像引用:Nature Innovations in the Microbiome
2015年2月、Nature誌にヒトの微生物叢(びせいぶつそう)についての特集が組まれました。以下、その序文The Microbes Withinの翻訳です。
※微生物叢:ヒトや皮膚、鼻腔・口腔、腸内、膣などで、一定のバランスを保ちながら共存している多種多様な微生物(菌・ウイルス・カビなど)の集まり
翻訳文責:
一社)化学物質過敏症・対策情報センター
代表理事 上岡みやえ
The Microbes Within
David Grogan
Nature volume518, pageS2 (26 February 2015)
内なる微生物叢(びせいぶつそう)
アントニー・ヴァン・レーウェンフックは、1683年9月17日付のロンドン王立協会宛ての手紙に、「非常に小さな動物が、非常に可愛く動いている」と書いた手紙を書いている。
彼が顕微鏡で観察していたのは、歯から削り取ったプラークだった。
ヴァンレーウェンフックの観察後、3世紀以上にわたって、人間の「微生物叢(びせいぶつそう)」、つまり人体のあらゆる部位に寄生している100兆個程の微生物は、それらを抽出培養するのが困難だったため、実験室では、あまり研究されてこなかった。
ところが、10年程前にシークエンシング技術が登場し、微生物学の未開拓領域の研究が開始された。
2012年に完成した「the Human Microbiome Project」(ヒト微生物叢プロジェクト)のデータベースのおかげで、私たちの体に生息する多様な微生物叢について、かつてないほどに詳しく知ることができるようになった。
ヒトの微生物叢の大半は、腸に寄生している。
彼らは単なる居候ではない。宿主の健康と生存に不可欠な機能の大半を担っている。
彼らは食物を消化し、抗炎症性の化学物質と化合物を生成し、免疫システムを訓練して味方と敵を区別している。
人間の微生物叢の役割に関する研究は、医学と栄養学の基礎をも揺さぶり始めている。
次ページ以降に発表している研究者を含む、一流の科学者は現在、人間は自給自足の生物ではなく、多数の協力し競合する微生物叢が定着した複雑な生態系であると捉えている。
この観点から見ると、人間の健康とは、生態学(生物と環境の相互作用を研究する学問分野)の一形態となる。
身体をケアするには、自らの微生物叢を豊かにすることも、その一部なのだ。
------ 以 上 --------------------
体調を整えるには、腸内細菌の数と種類を増やさねばならないことが、ハッキリしてきたようです。