📌学術論文の信頼性評価
1)学術論文の信頼性をはかる指標
2)学術論文誌トップ10
3)学術論文を掲載しているサイトの信頼性
4)学術論文誌の評価例
例1)The Lancet Planetary Health
例2)Heliyon
1)学術論文の信頼性を測る主要指標
1. インパクトファクター (Impact Factor, IF)
2. SCImago Journal Rank (SJR)
3. H指数 (H-Index)
4. 被引用数 (Citation Count)
5. Eigenfactor Score
6. Altmetric(オルトメトリクス)
1. インパクトファクター (Impact Factor, IF)
🔹 概要
- 学術誌の影響力を測る最も有名な指標。
- 「過去2年間に掲載された論文が、翌年にどれくらい引用されたか」 を示す。
- 高いほど影響力が大きい(ただし、分野によって基準が異なる)。
🔹 計算式
例:
あるジャーナルが2021年と2022年に100本の論文を掲載し、2023年にそれらが500回引用された場合:
🔹 用い方
✅ ジャーナルの影響力を測るのに最適
✅ 分野ごとに基準を比較(医学系は10以上も多いが、数学は2でも高評価)
⚠️ 短期間の影響力しか測れない(2年ベース)
⚠️ 分野によって異なるため、異分野比較には不向き
🔹 目安
- IF ≧ 10 → 超一流ジャーナル(Nature, Science, The Lancet)
- IF 5~10 → トップクラスの専門ジャーナル
- IF 2~5 → 標準的なジャーナル
- IF 1以下 → ニッチ分野や新しいジャーナル
💡 ジャーナルの評価には便利だが、個々の論文の評価には向かない。
2. SCImago Journal Rank (SJR)
🔹 概要
- ジャーナルの影響力を測るもう一つの指標。
- 引用元の影響力も考慮する(影響力の大きいジャーナルからの引用は高く評価される)。
- GoogleのPageRankのような仕組みで、引用の質を重視。
🔹 計算方法
- 単なる引用数ではなく、引用したジャーナルのSJRスコアも加味して加重平均を取る。
🔹 用い方
✅ 高品質ジャーナルを探すのに便利
✅ 分野ごとにQ1(上位25%)~Q4(下位25%)で評価される
⚠️ IFと違い、計算が複雑なので直感的には分かりづらい
💡 「SJR ≧ 1.0」なら良いジャーナル、Q1ならトップクラスと判断可能。
3. H指数 (H-Index)
🔹 概要
- 研究者個人やジャーナル、論文の影響力を測る指標。
- 「h回以上引用された論文がh本ある」 という数値。
🔹 計算方法
- H-index = 10 なら「10回以上引用された論文が10本以上ある」ことを示す。
🔹 用い方
✅ 研究者の評価に便利(優れた研究者はH-indexが高い)
✅ 長期間の業績評価に適している
⚠️ 分野によって基準が異なるため、異分野比較には不向き
💡 H-index ≧ 50 ならトップ研究者レベル。
4. 被引用数 (Citation Count)
🔹 概要
- 論文がどれくらい引用されたかを直接示す。
- Google Scholar, Scopus, Web of Science などで確認可能。
🔹 用い方
✅ 論文ごとの影響力を知るのに最適
✅ 分野を問わず直感的に理解しやすい
⚠️ 古い論文ほど有利になりやすい(時間が経つと引用が増える)
💡 引用数100以上なら注目論文。1000以上なら超有名論文。
5. Eigenfactor Score
🔹 概要
- ジャーナルの影響力を測る別の指標。
- 被引用数に加え、引用したジャーナルの質も考慮。
🔹 用い方
✅ SJRに似た指標で、質の高いジャーナルを探すのに便利
⚠️ 計算が複雑で一般にはあまり使われない
💡 影響力の大きいジャーナルを探すときに有用。
6. Altmetric(オルトメトリクス)
🔹 概要
- SNSやニュースでの拡散度を示す指標(Twitter, Wikipedia, メディア報道など)。
- 近年、特に社会的影響力を測るのに重要視されている。
🔹 用い方
✅ 一般向けの注目度を測るのに適している
⚠️ バズっただけの低品質な研究が高スコアになる可能性あり
💡 科学界以外での影響力を測るのに便利。
📌 まとめ
指標 | 目的 | 用い方 | 注意点 |
---|---|---|---|
Impact Factor (IF) | ジャーナルの影響力 | ジャーナルの評価に最適 | 分野間比較には不向き |
SCImago Journal Rank (SJR) | ジャーナルの影響力(質を考慮) | SJR ≧ 1.0なら良質 | 計算が複雑 |
H-Index | 研究者・論文の影響力 | 長期間の業績評価に最適 | 分野ごとに基準が違う |
被引用数 (Citation Count) | 論文の影響力 | 直感的で分かりやすい | 古い論文が有利 |
Eigenfactor Score | ジャーナルの影響力(質重視) | SJRと似た使い方 | あまり一般的でない |
Altmetric | 社会的影響力 | SNS・メディアでの拡散度 | 科学的な質は保証しない |
🔹 結論
- ジャーナルの評価 → IF, SJR
- 研究者の評価 → H-Index
- 論文の評価 → 被引用数, Altmetric
- 総合的に判断するのがベスト!
2)学術論文誌トップ10
世界的に評価の高い科学論文誌のランキングは、インパクトファクター(Impact Factor, IF)などの指標を基に決定されます。以下に、最新の情報を基にしたトップ10の科学論文誌を紹介します。
-
CA-A Cancer Journal for Clinicians
- インパクトファクター: 120.83kolabtree.com
- 分野: 腫瘍学Note+9kolabtree.com+9wolterskluwer.com+9
- 概要: 米国がん協会が発行する隔月刊の査読付きジャーナルで、がんの研究、診断、治療に焦点を当てています。 kolabtree.com
-
New England Journal of Medicine (NEJM)
- インパクトファクター: 74.699kolabtree.com
- 分野: 一般医学irds.titech.ac.jp+6biomedicalhacks.com+6mindthegraph.com+6
- 概要: マサチューセッツ医師会が発行する週刊の査読付きジャーナルで、200年以上の歴史を持ち、医学全般の研究を掲載しています。 kolabtree.com
-
The Lancet
- インパクトファクター: 60.392kolabtree.com
- 分野: 一般医学ieice.org+9biomedicalhacks.com+9natureasia.com+9
- 概要: 英国発の週刊医学ジャーナルで、医学研究や臨床試験の結果を広く掲載しています。 kolabtree.com
-
Journal of the American Medical Association (JAMA)
- インパクトファクター: 51.273kolabtree.com
- 分野: 一般医学
- 概要: 米国医師会が発行する週刊の査読付きジャーナルで、医学の最新研究やレビューを提供しています。 kolabtree.com
-
Journal of Clinical Oncology
- インパクトファクター: 32.956kolabtree.com
- 分野: 腫瘍学kolabtree.com
- 概要: 米国臨床腫瘍学会が発行するジャーナルで、がん治療の臨床研究を中心に掲載しています。 kolabtree.com
-
Nature Reviews Molecular Cell Biology
- インパクトファクター: 94.444
- 分野: 分子生物学、細胞生物学biomedicalhacks.com
- 概要: 分子および細胞生物学の最新のレビューを提供する月刊誌です。
-
Nature Reviews Drug Discovery
- インパクトファクター: 84.694富士山ネット
- 分野: 薬理学
- 概要: 新薬の発見と開発に関するレビューを掲載する月刊誌です。
-
Nature Biotechnology
- インパクトファクター: 31.9biomedicalhacks.com
- 分野: バイオテクノロジーbiomedicalhacks.com
- 概要: バイオテクノロジー分野の最新研究を掲載する月刊誌です。 biomedicalhacks.com
-
Cancer Cell
- インパクトファクター: 23.9
- 分野: がん研究
- 概要: がんの生物学的研究に焦点を当てたジャーナルです。 biomedicalhacks.com
-
Nature Medicine
- インパクトファクター: 30.6
- 分野: 医学全般
- 概要: 医学の最新研究や臨床試験の結果を掲載する月刊誌です。
これらのジャーナルは、各分野で高い評価を受けており、研究者や医師にとって重要な情報源となっています。ただし、インパクトファクターは分野によって異なるため、異なる分野間での単純比較は注意が必要です。
3)学術論文を掲載しているサイトの信頼性
1. National Institute of Health (NIH)
信頼性:★★★★★(非常に高い)
概要
- NIH はアメリカの国立衛生研究所で、医学・生物学分野の世界的な研究機関。
- NIH自体が論文を発行するのではなく、NIHの助成を受けた研究の成果がPubMedやPMC(PubMed Central)などに収録される。
- PubMed は、米国国立医学図書館(NLM)が運営する、医学・生物学系論文のデータベース。
- PMC は、PubMedのオープンアクセス版で、無料で閲覧できる査読済み論文を集めたもの。
信頼性のポイント
✅ 査読済み論文が中心(ただしプレプリントは注意)
✅ 米国政府機関が管理(不正や質の低い研究が排除されやすい)
✅ 高インパクトな医学・生物学系ジャーナルが多く含まれる
⚠️ プレプリントやオピニオン記事(査読なしのもの)には注意が必要
💡 結論:PubMed / PMC に収録されている論文の多くは、信頼性が高い。が、プレプリント論文やオープンアクセス論文の質は個別にチェックする必要あり。
2. ScienceDirect (Elsevier)
信頼性:★★★★☆(高いがピンキリ)
概要
- ScienceDirect は、学術出版社 Elsevier が運営するオンライン論文データベース。
- Elsevier は世界最大級の学術出版社で、多くの一流ジャーナル(例:The Lancet、Cell、Current Biology)を発行している。
信頼性のポイント
✅ 多くの査読済み論文を掲載(特に Elsevierの有名ジャーナル)
✅ 分野ごとにトップクラスのジャーナルが揃っている
⚠️ オープンアクセスジャーナルの質にはバラつきあり(例:Heliyon のように質の管理が甘いものもある)
⚠️ 一部の低品質ジャーナルも含まれる(Impact FactorやSJRを確認するのがベター)
💡 結論:ScienceDirect にある論文は全体的に信頼性が高いが、ジャーナルごとに質が異なるので、Impact Factor などをチェックして判断するのが重要。
3. ResearchGate
信頼性:★★★☆☆(要注意)
概要
- ResearchGate は、研究者同士が論文を共有し、議論するためのプラットフォーム(学術版SNSのようなもの)。
- 多くの査読済み論文がアップロードされているが、査読を受けていないプレプリント(未公開論文)や学会発表資料なども含まれている。
- 研究者自身が自由にアップロードできるため、信頼性の管理が緩い。
信頼性のポイント
✅ 有名なジャーナルに掲載された論文のコピーもある(正式版か確認が必要)
✅ 研究者のプロフィールを見れば、その人の専門性をある程度判断できる
⚠️ 査読なしのプレプリントが多い(プレプリントは正式な論文ではない)
⚠️ 個人の意見や未発表のデータもある(ジャーナルのチェックを受けていない)
💡 結論:ResearchGate の論文は、正式なジャーナルに掲載されたものかどうかを確認することが重要。査読済みなら信頼性は高いが、未査読のプレプリントは慎重に扱うべき。
まとめ
サイト | 信頼性 | 特徴 |
---|---|---|
NIH(PubMed, PMC) | ⭐⭐⭐⭐⭐(非常に高い) | 政府機関が管理。医学・生物学分野で信頼性が高い。 |
ScienceDirect (Elsevier) | ⭐⭐⭐⭐☆(高いがピンキリ) | Elsevierのジャーナルは多くが信頼できるが、ジャーナルごとに質が異なる。 |
ResearchGate | ⭐⭐⭐☆☆(要注意) | 査読済み論文もあるが、査読なしプレプリントや個人の見解も含まれるため、注意が必要。 |
判断のポイント
- 「査読済み論文かどうか?」 → 信頼性を判断する最も重要な基準
- 「掲載ジャーナルの質は?」 → Impact Factor, SJR などをチェック
- 「プレプリントかどうか?」 → 研究途中のデータなら慎重に扱う
- 「どの機関が管理しているか?」 → 政府機関や大手出版社は比較的信頼できる
これを意識すれば、信頼できる情報を選びやすくなるよ!✨
4)各学術論文誌の評価例
例1)The Lancet Planetary Health
1. 歴史と概要
創刊年と目的
- 創刊:2017年 ncbi.nlm.nih.gov+1scholar9.com+1
- 目的:プラネタリーヘルス(地球規模の健康)に関する研究を促進し、人間の健康と地球の自然システムの相互関係を探求すること。
プラネタリーヘルスとは
- 人間の社会経済活動が地球環境に与える影響と、それが人類の健康や存続に及ぼす影響を研究する分野。 朝日新聞
出版情報
2. 客観的評価
インパクトファクター (Impact Factor, IF)
- 2023年:11.83
- 前年の9.41から約25.72%の増加を示し、上昇傾向にあります。 resurchify.com
SCImago Journal Rank (SJR)
- 2023年:5.057resurchify.com+1research.com+1
- 前年の3.586から上昇し、全体のランキングで276位に位置しています。 resurchify.com
H指数 (H-Index)
- 72
- これは、同誌の論文のうち72本がそれぞれ少なくとも72回引用されていることを示します。
分野別ランキング
- 環境科学:60位
- 医学:149位 research.com
3. まとめ
The Lancet Planetary Health は、プラネタリーヘルスという新興分野に焦点を当てた信頼性の高い学術誌です。そのインパクトファクターやSJRの上昇は、同誌の影響力と評価が年々高まっていることを示しています。また、環境科学や医学の分野でも高い評価を受けており、関連する研究者や専門家にとって重要な情報源となっています。
例2)Heliyon
According to Scimago, the journal Heliyon has a SCIMAGO SJR (Source Normalized Impact Journal Rank) of 0.617, which places it in the Q1 category.
Additional information
In 2023, Heliyon had an impact factor of 3.4.
Heliyon is an open access journal published by Cell Press that publishes any paper reporting scientifically accurate research.
Heliyon is indexed in the following public directories: DOAJ, ELSEVIER SCI LTD.
Heliyon uses anonymous peer review.
In September 2024, Web of Science put Heliyon on hold due to concerns about the quality of the content published in the journal.
Related information
You can check out the SJR for other journals on Scimago.
You can check out the Research Impact Score and Impact Factor for Heliyon on Research.com.
Heliyon の信頼性について、この情報をもとに考えると、評価はやや微妙な位置にあります。以下のポイントを整理してみます。
ポジティブな要素
-
SCImago SJR が 0.617 (Q1)
- SJR(SCImago Journal Rank)は、論文の被引用数だけでなく、引用した論文の信頼性も加味する評価指標です。
- Q1(上位25%)に分類されているということは、比較的高い評価を受けていることを示します。
-
2023年のインパクトファクター (Impact Factor) が 3.4
- これはそれなりに高い値であり、多くの研究者に引用されていることを示唆します。
- ただし、インパクトファクターは分野によって基準が異なるため、他の類似ジャーナルと比較することが重要です。
-
匿名の査読(Peer Review)あり
- これは最低限の信頼性を保証する要素です。少なくとも査読なしで論文を掲載する「Predatory Journal(ハゲタカジャーナル)」とは異なります。
-
DOAJやElsevierのデータベースに収録
- **DOAJ(Directory of Open Access Journals)**は、オープンアクセスの質を保証する指標のひとつ。
- Elsevierのデータベースに収録されていることも、一定の評価を受けている証拠です。
ネガティブな要素
-
Web of Science が 2024年9月に「保留 (on hold)」扱いにした
- これはかなり重要なポイントで、Web of Science は論文の品質を厳しく審査するデータベースのひとつです。
- 「on hold」は通常、ジャーナルの品質や査読の厳格性に懸念がある場合に適用されます。
- 最悪の場合、将来的にWeb of Scienceから除外される可能性もあります。
-
「科学的に正確な研究であれば何でも受け入れる」
- Heliyon は、Cell Press によって発行されるオープンアクセスジャーナルですが、「科学的に正確であれば何でも掲載する」という方針です。
- これは、専門性の高いトップジャーナル(例:Nature, Science, The Lancet など)とは異なり、論文のインパクトや革新性よりも「技術的な正しさ」を重視していることを意味します。
- そのため、掲載論文の質にバラつきがある可能性があります。
結論
- Heliyon は Q1 ジャーナルに分類され、一定の評価を受けているが、トップレベルの学術誌とは言えない。
- インパクトファクターや SJR の数値は悪くないが、Web of Science の「on hold」ステータスは懸念点。
- 「科学的に正確なら掲載する」という方針のため、研究の影響力や新規性はあまり考慮されていない可能性がある。
- 査読があるため、完全なハゲタカジャーナルではないが、ジャーナル全体の品質管理に疑問が出ている状況。
どう判断すべきか?
- 一般的な信頼性はそこそこあるが、トップジャーナルに比べるとやや劣る。
- 論文の質は個別に判断すべきで、Heliyon に掲載された論文=高品質とは限らない。
- 最新の動向をチェックし、今後 Web of Science の評価がどうなるかを注視する必要がある。
もし特定の論文の信頼性を判断するなら、その論文の被引用数や、他のジャーナルでの評価を確認すると良いでしょう。