以下、福岡大学「酵素の化学」 からの引用です。
酵素(enzyme)とは
生体内のほとんどの化学変化は酵素(enzyme)というタンパク質によって触媒される。
酵素と結びつき変化を受ける物質を基質(substrate)という。
基質は酵素分子の表面の特定の部位(活性部位, active site)に結合し、酵素タンパク質が作りだす特殊な環境により、いったんエネルギーの高い状態の(ただし触媒がない場合よりは低いエネルギーで済む)酵素-基質複合体を形成する。
この状態から、基質は生成物(Product)へと化学形を変え、酵素から離れる。
それと同時に、酵素は元の分子状態に戻り、再び次の基質と結合する。
酵素のはたらき方:酵素作用のモデル
酵素と結びつき変化を受ける物質を基質(substrate)という。
基質は酵素分子の表面の特定の部位(活性部位, active site)に結合し、酵素タンパク質が作りだす特殊な環境により、いったんエネルギーの高い状態の(ただし,触媒がない場合よりは低いエネルギーで済む)酵素-基質複合体を形成する。
この状態から,基質は生成物(Product)へと化学形を変え,酵素から離れる。それと同時に、酵素は元の分子状態に戻り、再び次の基質と結合する。
酵素反応の一般的な表し方
酵素反応の性質
1)基質特異性(substrate specificity)
酵素は特定の反応だけを触媒する。また,特定の化合物または一群の化合物にしか作用しない。この性質を酵素の基質特異性という。
【基質特異性が高い酵素の例】
●ペプシン,トリプシン:
タンパク質やペプチドの特定のアミノ酸残基のペプチド結合を加水分解する。
●α-アミラーゼ:
デンプンを加水分解し,マルトースに変える。しかし,セルロースや寒天など,他の多糖類には作用しない。
●リパーゼ:
脂質を加水分解する。タンパク質や糖には作用しない。
●マルタ-ゼはマルトースだけを,スクラーゼはスクロースだけを,β-ガラクトシダーゼはラクトースだけを加水分解する。 ウレアーゼは尿素だけを分解する。
2)pH依存的/至適pH
酵素の本体はタンパク質であるから,その触媒作用にはタンパク質としての性質が反映される。
酵素が作用を発揮する最適のpHを至適pH (optimum pH)という。酵素の活性には種々のアミノ酸の解離性原子団が関与する。酵素活性がpHに依存するのは,それらの原子団の解離がpHによって変化するためである。
3)酵素反応は温度にも依存/至適温度
酵素が作用を発揮する最適の温度を至適温度(optimum temperature)という。
一般に,反応速度は温度とともに上昇するが,酵素はタンパク質であるから高温では変性するため,活性が逆に低下する。
《至適温度》
一応の目安であり,例外はいくらもある。
動物の酵素では 40~50℃,植物の酵素では50~60℃である。好熱性細菌のように, 80~90℃(超高熱菌には90℃以上)のものもある。
4)濃度
酵素反応の速さは,酵素濃度や基質濃度に依存する。
5)酵素反応の阻害
酵素は種々の化学物質によって阻害(inhibit)される。
医薬品の多くは「阻害剤」である。
①拮抗阻害(競合阻害)
酵素の活性部位に結合し,基質の結合を妨げる阻害様式。基質とよく似た化学構造を持つ阻害剤「基質もどき」 (本物のりんごとプラスチックのりんご)
②非拮抗阻害(非競合阻害)
酵素の活性部位以外の部位に結合する阻害。従って,阻害剤はEともEIとも結合。
6)補酵素
酵素の触媒作用は,タンパク質だけでなく,しばしば他の分子を必要とする。その1つが補酵素である。
これらアミノ酸以外の成分を(補助因子,cofactor)という。
また,タンパク質部分をアポ酵素(apoenzyme),補欠分子団を結合した状態の酵素をホロ酵素(holoenzyme)と呼ぶ。
青はアポ酵素(不活性)を表す。補欠分子族(●)がアポ酵素に
結合すると活性型になり,基質に作用できる。
●補助因子
1. 金属イオン
Ca2+(アミラーゼ),Mg2+(ヘキソキナーゼ),Zn2+(金属プロテアーゼ),Cu2+
2. 補酵素(coenzyme): ビタミンB類が補酵素の原料になる。
①非共有結合でアポ酵素に結合した補酵素。
大部分の補酵素。NAD+, NADP+, FAD, FMN, TPPなど
②共有結合でアポ酵素に結合した補酵素(補欠分子族という)
酵素タンパク質のアミノ基,チオール基などに共有結合。FAD, ヘム,ビオチン,リポ酸など